2009年4月16日木曜日

魚類免疫学Q&A 080514

哺乳類だけ血小板が核を失っている(巨核球から千切れてできた)のはなぜか?

血小板に核がないのは、それが巨核球の切れはしだから。参照Web

http://ja.wikipedia.org/wiki/巨核球

http://ja.wikipedia.org/wiki/血小板

 

フローサイトメトリーの機器(=フローサイトメーター)の値段は?

1千万円〜5千万円程度です。

 

どれくらい小さい細胞も分析できるのか?

バクテリアも分析できるので、直径0.51 μmくらいの粒子でも大丈夫でしょう。

 

フローサイトメトリーの結果(図)の見方がよくわからたかった。

今回、もう一度説明しますね。

 

何が問題で、魚類で株化された白血球が得られないのか?

理由はわかりません。株化されるということは無限の増殖能を獲得するということで、これはある種のがん化と見なすこともできます。魚類の細胞はがん化しにくいのかも。

 

白血球を長期培養・株化するために、その細胞をわざとがん化させて培養することはできないのか? (←なかなか通な質問ですね。)

ある程度の成功例は過去にあります。コイやヒラメの白血球(リンパ球)の培養下での寿命(約2週間)が、Rasなどのがん遺伝子の導入によって2-3ヶ月に延びましたが、不死化(株化)には至りませんでした。

 

哺乳類の赤血球だか核を持たないのはなぜか?何か利点があるか?

核を捨てて小型化し、体積当りの表面積を大きくして酸素運搬能力を上げる、狭い毛細血管も通れるようになった、というまことしやかな説明があります。

参照:http://www.num.nagoya-u.ac.jp/display/embryo/index.html

 

なぜ好酸球や好塩基球は食細胞ではないのか?

食作用を発揮するのに必要な、細胞骨格を動かす能力や、活性酸素産生酵素系、消化酵素系を欠損しているからでしょう。

 

ギムザ染色とはどんな染色か?

ギムザ(Giemsa)液という染色液による染色法です。ギムザ液は塩基性色素(メチレン青、アズール青等)と酸性色素(エオジン)との混合物。血液細胞の染色に頻用される。染色像の例は下記のサイト参照。

http://www.jichi.ac.jp/usr/path/stain/giemsa.html

 

好中球・好酸球・好塩基球の意味・名前の由来は?

ギムザ染色(上述)において、塩基性色素で良く染まる顆粒を多く含むのが好塩基球、酸性色素でよく染まる顆粒を多く含むのが好酸球、どちらでもあまり染まらない顆粒を多く含むのが好中球です

 

食細胞が異物を取り込みすぎて破裂することは無いのか?

きっと無いと思いますが、よくわかりません。

 

赤血球と白血球の数の比率は、魚と哺乳類で同じか?

若干異なりますが、およそ同じです。白血球の中の顆粒球・リンパ球などの比は、種によってかなり違います。

 

多形核を持つことのメリットは何か?

メリットはよくわかっていません。

 

Respiratory Burstの時に食細胞の酸素消費量が上がる分だけ、酸素摂取量も上昇するのか?

細胞単位の酸素摂取量もあがります。これが個体レベルでも検出できるほどの変化かどうかはわかりません。

 

食作用で取り込むことができる異物の大きさの上限は?

もとの自分の細胞のサイズに近いものまで取り込む場合があります。それより大きい物質にもとりついて攻撃しますが、この場合は細胞内に貪食することはできず、複数の細胞がびっしりとりついて「包囲」したような見かけになります。

 

炎症を誘発する物質、白血球を誘引する物質は何か?

いろいろな物質が白血球を誘引して炎症を惹起します。その多くはサイトカインと呼ばれる一群のタンパク質です。感染が起こった局所の細胞や、微生物に出会った白血球などが分泌します。サイトカインについては、その構造・昨日について講義する機会がありますのでお楽しみに。

 

マクロファージが微生物を認識する詳細なしくみを知りたい。

マクロファージの細胞表面に微生物の細胞壁を直接認識できるレセプターが発現しています。(β-1,3-グルカン認識受容体、各種接着因子、スカベンジャーレセプター、Toll-like receptorなどの名前がついています。)これら分子の働きについてさらに知りたい場合は、免疫学の教科書を参照するか、これら分子の名前をキーワードに使って、インターネットで解説ページを検索してみて下さい。ただし、インターネット情報については、さらに書籍や論文で裏をとることを忘れずに。鵜呑みは危険です。

 

好中球は異物を貪食したら活性酸素を出して自らも死ぬので、消化した異物を栄養として取り込む必要は無いのでは?

理論的にはそうですね。ただし、取り込んでその場で必要なエネルギー源として利用することは無駄ではないでしょう。確かめたわけではありませんが。

 

単球/マクロファージが感染局所に到達したときにはもう炎症が治まっていることは無いのか?

炎症が治まれば、単球やマクロファージを呼び寄せる物質が感染部位で産生されなくなり、集まってきません。

 

擦り傷、切り傷にも単球・マクロファージは集まってくるのか?

感染が続いていれば集積します。

 

食細胞が取り込んだ異物のうち消化されなかったものを細胞外に排出した場合、排出された異物の残渣は再び異物として認識されるか?

すごく良い(鋭い)質問です。わかりません。調べましたが、そのような事象に関する研究報告は見つかりませんでした。類推ですが、ある程度小さく消化されてしまうと(たとえば多糖が重合度2〜3のオリゴ糖になると)もはや異物とは見なされなくなるでしょう。タンパク質ならば、やはり10〜50アミノ酸程度のペプチドまで消化されると免疫応答を引き起こさなくなります。でも、消化できない巨大分子がそのまま排出されたら、、、、もう一度別の細胞が異物と認識するかもしれませんね。あるいは、不消化物がそのまま排出されずに食細胞(特にマクロファージ)の中に長期にわたって閉じこめられたままになる場合もあります。この場合は、食細胞から排出されずに、それ以上の異物認識反応も引き起こしません。

 

魚類には、Bリンパ球以外にも食作用を起こす細胞があるか?

哺乳類と同様に、好中球、単球、マクロファージなどは活発な食細胞です。

 

ニジマス単球がプラスチックビーズをどのように認識できるのか?

はっきりとはわかっていませんが、たまたまある種のプラスチック(たとえばポリスチレン)に親和性を示す接着タンパクを膜面に持っていると考えられています。

 

マクロファージ/単球や好中球以外にも食作用を示す細胞を持つ動物がいるか?

ニジマスB細胞の食作用活性を報告した研究者(オリオール・スニエル博士)は、アフリカツメガエル(Xenopus)のB細胞やマウスのB細胞にも類似の食作用活性をあることを見つけていますが、それらの活性は魚類のB細胞ほどには高くないそうです。四肢動物の進化と共に、B細胞は食作用活性を失っていったのかもしれません。

 

魚類のBリンパ球が貪食作用を示すことを発見した経緯を知りたい。

ニジマスの白血球を使って貪食反応をしていたら、たまたまB細胞に似た小さな細胞が異物粒子を取り込んでいるような顕微鏡像を見つけたそうです。これをさらっと流さずに、きちんと注目してそれがB細胞であることをいろんな方法で確認したことから、あのような大きな発見が生まれました。データや観察結果をなんとなく眺めるだけでなく、先入観を排除してきちんと自分を納得させる努力が大事ですね。

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