2011年4月26日火曜日

魚類免疫学 110420 Q&A


*Q&Aおよび授業資料のpdfファイルはこちらからダウンロードできます(授業があった日からふつうは1週間以内にアップします。サーバーにアップしてから2週間はダウンロードできます。)

Q コラーゲンを食べて分解・消化・吸収されたアミノ酸は、コラーゲン生合成の材料として使われやすいか?
A まずはWikipediaでも足がかりに調べてみたらいかがですか?
http://ja.wikipedia.org/wiki/コラーゲン
簡単に表現すれば、
・摂取したコラーゲン中のヒドロキシプロリンやヒドロキシリジンは、コラーゲンの生合成には使われない。
・上記アミノ酸を形成するためのヒドロキシル化にはビタミンCが必須。
・直接生合成の材料にはならないが、コラーゲン由来ペプチドがコラーゲン合成を促進させるような間接的な効果は報告されている。

Q コラーゲンはどのように摂取すれば効果があるのか?
A 「どんな」効果を得たいのかわかりませんが… 

Q コラーゲンを飲んでも意味がないのにそんな商品が発売されているのは何故か? 意味がないと考えるのは(中尾の)個人的意見?
A 効果があると感じ、信じている人がいるから売れるのでしょう。上記のような間接的効果があることを否定しませんが、現在のようなコストを払ってありがたがる意味はないと思います。これは私の個人的意見です。普通のタンパク質と必要十分なビタミンCを摂取していれば、必要な量のコラーゲンは合成されるものでしょう。ことさらコラーゲンをありがたがる必要はないのでは? さらに言えば、ゼラチンはコラーゲンの熱変性物です。経口摂取するんだったらどちらでも同じですよね。

Q コレクチンのコラーゲン様領域は、アミノ酸配列がコラーゲンに似ているのか、三本鎖構造をとる点が似ているのか?
A G-X-Yが繰り返すアミノ酸配列のタンパク質は、正常に存在するには必然的に三本鎖構造らせん構造をとります。したがって、両方の点で類似していることになります。

Q コラーゲンのアミノ酸配列-G-X-Y-XYにはどんなアミノ酸が入るのか?どんなアミノ酸がヒドロキシ化を受けているのか?
A ヒドロキシル化されるアミノ酸はLysineProline。そのほかどんなアミノ酸があるかは、
http://www.genome.jp/dbget-bin/www_bfind?swissprot
で、collagenを検索してみましょう。

Q 抗菌ペプチド耐性菌によって免疫が効かなくなることとエイズウイルスとの関連はありますか?
A ありません。自分の抗菌ペプチドが無効になることと、HIV(エイズウイルス)で自分が免疫不全状態になることはまったく異なります。

Q もっと脱線話しを。
A 期待されなくとも、話さずにはおられますまい。

Q レクチンによる異物排除の仕組みがわかりにくかった。
A 凝集反応、オプソニン化、補体の活性化などに関する今後の授業で触れ直すことにします。

Q チキン型とグース型リゾチームの由来は?
A ニワトリ卵白から最初に見つかったのがチキン型。グース型の命名も同様な理由だと想像しますが、証拠は見つかりませんでした。google検索でいろいろ探してみたら?

Q 抗菌ペプチドは細胞壁(ペプチドグリカン層)や外膜を透過して細菌の細胞膜に到達できる?
A 分子量が小さいので、細胞壁や外膜を通過できます。

Q 魚は卵白リゾチームを食べてくれる?
A 配合飼料に練り込めばOKです。

Q グラム陽性菌と陰性菌(の細胞壁?)に物理的な強さの違いがあるか? 両細菌の利点と欠点は?
A 細胞壁の物理的強度に関しては気にしたこともありませんでした。わかりません。「利点と欠点}という考え方は馴染まない気がします。

Q グラム陽性・陰性菌ではどちらの方が(種の?)数が多いか?
A 微生物学/細菌学の教科書を参照して下さい。ところで細菌学には、オンラインの教科書もあるんですね。
http://www.textbookofbacteriology.net/index.html

Q カブトガニタキレクチン5の5カ所のアセチル基結合部位のうち、プリントの図にあるように4カ所で結合しただけでは正味の結合力としては強くないのか?(5カ所全てが結合しないとダメ?)
A 正味の結合力の強い/弱いにはっきりした境界があるわけではく、結合力は実際にリガンドが結合している数に比例するでしょう。

Q グース型リゾチウムはキチン分解活性が弱いのに、なぜ進化的に保存されているのか?
A 興味深い、大事な視点だと思います。キチンは分解できずとも抗菌作用はあって、それに生体防御上の意味があるのでしょう。総説を紹介します。
Lysozymes in the animal kingdom.
Callewaert L, Michiels CW.
J Biosci. 2010 Mar;35(1):127-60. Review.
ホヤの一種(Ciona intestinalis)には、グース型しか見つからないのだそうです。
Urochordates carry multiple genes for goose-type lysozyme and no genes for chicken- or invertebrate-type lysozymes.
Nilsen IW, Myrnes B, Edvardsen RB, Chourrout D.
Cell Mol Life Sci. 2003 Oct;60(10):2210-8

2011年4月19日火曜日

魚類免疫学 110413 Q&A


Q ”予期している”の意味がよくわからない。
A これから自然免疫のメカニズムを説明しながら、この点に関しても理解できるように工夫したいと思います。

Q 両親にはない、卵・そばアレルギーがあるのは獲得免疫に関係するのか?
A はい、獲得免疫が関係します。遺伝と無関係ではないですが、100%遺伝するわけではありません。

Q 水産用医薬品にも様々なものがあるようだが、それらはどんなときに使われるか?
A この授業のかなり後の方で杣本先生から講義があります。

Q 魚類の免疫研究で一番注目されている魚類(魚種)は何か?
A 1種ではないです。モデル生物としては、ゼブラフィッシュ、メダカ、トラフグなどの研究者人口が多いです。産業場の重要種としては(流行り廃りがあるが)、日本ではヒラメ、欧米ではニジマスが人気です。私の研究室が対象とするコイとギンブナは、ゼブラフィッシュの親戚で、世界レベルでの産業的重要性とモデル魚としての優れた性質を兼ね備えています。

Q 魚に投与された免疫強化剤を、魚ごと人間が摂取すると何か影響がないか?
普通の(天然物の)免疫強化剤は主に多糖かタンパク質なので、少量を経口で摂取することには問題ないと考えられますが、すべての免疫強化剤は経口摂取における安全性を確かめてから認可されます。

Q 獲得免疫に置いて、親子で異なる細胞をもるようになるのはどの時点からか?
リンパ球の元になる幹細胞が骨髄で作られてから、抗体やT細胞受容体という分子の遺伝子が変化します。個体の年齢に応じてと言うよりは、リンパ球が造血されてから成熟して行くにしたがって遺伝子が変化します。

Q 自然免疫では何がどうやって異物に働くのか?
A それはそれはいろんな分子がありますので、これからの授業で順に説明します。
例)レクチン、抗菌ペプチド、補体、リゾチームなどなど

Q IgGIgEって何?
A 抗体あるいはイムノグロブリンと呼ばれるタンパク質には様々な種類(様々なクラスがある、と表現)があります。GとかEとかはそのクラスの違いです。詳細は追々講義します。

Q 獲得免疫は有顎脊椎動物にしかないそうだが、獲得免疫機構と顎には何か関係があるか?
A 直接の関係はありませんが、進化の中で有顎脊椎動物が出現するときに起きたゲノム全体に渡る大きな遺伝子変化が、顎を生じさせたり、同時に獲得免疫も生じさせたのだと考えられます。

Q 魚類と哺乳類で免疫系が大きく異なる点は何か?
A これは簡単な問いですが、広く深い問題です。この授業全体で順を追って答えていきます。

Q Phase 3の眼とは?
A 柳田邦男氏による同名の著書(講談社、1984)より。
Phaseとは人間の意識レベルを示す。レベルは0〜4
                Phase 0= 昏睡・失神 状態(判断力 ゼロ)
                Phase 1= ぼんやり、たいくつ、酩酊、疲労困憊(判断の信頼性は低い)
                Phase 2= リラックス、定例作業時(予測や創造的活動能力は発揮されない)
                Phase 3= 精神活動が活発、意識が明解・機敏(適度な緊張)
Phase 4= 興奮、驚愕、慌てる、パニック(一点集中、判断力停止。信頼性は1と同様)
Phase 3の意識状態でものごとを見ましょう、という意味。
あ、Amazonで調べたら文庫版も含めて絶版みたいですね。興味がある人には貸しますよ。

Q 私(=中尾)がインフルエンザのワクチンを打たない理由とは?
A 免疫力が特に低下した病人や高齢者、乳幼児を除いて、普通の健常人はインフルエンザにかかっても、適切な安静と栄養状態を保てば多くの場合はいずれ治癒する。そうして得た本当の免疫こそ体を次回のインフルエンザ感染から守るのに最も強力である、と考えるからです。あなたに「打つな」と言っているのではないことに注意。
(参考)進化から見た病気(講談社ブルーバックス、栃内新 著、2009

Q 今日に限ってかもしれないが、もう少し板書を充実させて欲しい。
A 基本的にはスクリーンへの映写で進めますが、大事な点は板書します。