2009年4月21日火曜日

魚類免疫学Q&A 090415

病原体に感染した時期の違いによって、免疫の強さに違いがあるか?

感染後、あるいはワクチン接種後時間がたてばたつほど、免疫力は低下する傾向にありますが、どの程度免疫力が持続するのかは、その病原体によっても違います。また感染・接種ルートによっても異なります。

 

「免疫力が弱っている」状態では、免疫系にどんな変化が起こっているのか?

非常に難しい質問です。いろんな白血球の活性が下がっていたり、抗体の濃度が下がっていたり、というのが考えられますが、免疫因子の完全な欠損状態を除けば、実際には何処がおかしくなっているのか、はっきりとはわかっていません。

 

獲得免疫をもつ有顎脊椎動物以外に動物は、自然免疫だけで生きているのか?

そうです。だから自然免疫の力を侮る事なかれ、ということですね。もっと自然免疫を学ぼう、という動きが活発になってきました。

 

病原微生物はは、どのような作用で魚に病気を引き起こすのか?(病原体自身が分泌する物質による?)

作用はいろいろですが、毒素を放出して細胞・組織を壊す・阻害する、という作用の他に、身体の免疫系をかく乱し、過剰な免疫反応を起こさせることによって病気にする場合もあります。

 

スライドが見にくい!!!!!

ゴメン。これからもう少し部屋を暗くしてみます。それでもダメなら、もっと調子の良いプロジェクターを持ち込みます。

 

寄生虫がいると魚は死ぬのか? 宿主が死ぬと寄生虫はどうなるのか? タイの口の中によく虫がいるけど、あれでは餌が食べにくかろう、、、

衰弱させる、二次的な感染症のリスクを高める、直接致死的に働く、など作用はいろいろです。

タイの口の中にいる虫=タイノエですね。

 

http://www.city.kawasaki.jp/35/35hosyo/home/jiken-tainoe.html

http://crossbreed.jp/archives/200801111230.php

 

魚用の麻酔って?

キナルジン、オイゲノール、フェノキシエタノール、MS-222など。詳細はgoogleで検索してみて。

 

魚類の免疫研究で人間に応用できたものはあるか?

魚類で見つかった免疫因子をヒトの薬につかう、などの直的的な応用はまだ少ないです。でも、強力な抗菌ペプチドが魚類から発見されて、抗菌薬への応用されるなどの例はあります。それよりも、人間への応用としては、人間の免疫系をよりよく理解するために、魚類の免疫系と比較してみる、というアプローチが大事。

 

アレルギーについて詳しく知りたい。

この講義シリーズの後半で触れるでしょう。

 

ウイルスのワクチン開発がどのように行われるのか?

1.病原ウイルスが何であるかを同定 2.ウイルスの大量増殖法を開発(培養細胞? 鶏卵?)

3.ウイルスの遺伝子構造を解明 4.感染力や病原性を左右する遺伝子・タンパク質を同定

などなど沢山の基礎研究を経て、試作品がつくられ、数多くの動物実験と臨床試験を経て開発されます。

参照:http://www.nibio.go.jp/topixs/vaccine/

 

試験は難しいですか? 特に注意して学ぶべきコトは?

何が大事かをよく考えながら話しを良く聞くこと。

試験の難易度はひとそれぞれ。

 

ワクチンには食品衛生学的、公衆衛生的な問題はないのか?

人間のワクチンは食べ物ではないので、食品衛生学的な問題は馴染まない。魚類のワクチンは後に人間の口に入る可能性があるので、食品としての注意が必要。公衆衛生学的な問題が何かは判然としない。

 

犬・猫アレルギーの原因物質は? なぜ、特定の動物に対してだけアレルギーになるのか?

それぞれ毛や皮膚の破片(フケ、垢)を構成するタンパク質の構造が異なり、それらを人間の免疫系が見分けているから。

 

生まれつき風邪を引きやすいなど、ある種の病気になりやすさと、自然免疫の能力とは関係があるか? 自然免疫を強化することはできるか?

関係あるでしょうね。自然免疫を強化する、というふれこみの機能性食品や栄養補助食品はあります。効果は、あったりなかったり。個人差があるでしょうね。

 

養殖場で11尾の魚にワクチンを注射するのは面倒ではないか?

面倒ですが、有効で経済的に折り合えば実施します。もしもっと簡便な方法が開発されればもっともっと普及するでしょう。こういうのも大事な研究だと思います。

2009年4月20日月曜日

ガラス器具の洗浄

  1. 水洗い
    • 洗浄の基本は水洗いである。特に、タンパク質などの生体成分が付着したままの器具を乾燥させてしまうと、乾固・固着して通常の方法では除去できない。まずは、使った器具は一刻も早く水につけ洗う。あるいはバケツ・バットに張った水に浸しておく。
    • 水洗後は、ブラシやスポンジに洗剤をつけて器具の内側・外側を洗う。
    • 水または湯(50~60℃)に洗浄液を溶かし、その中に数時間から数日つけておくのもよい。必要ならば、さらにブラシやタワシで擦る。
    • ブラシ・スポンジ洗い用の洗剤と超音波用の洗剤はきちんと使い分ける。
    • 洗剤で洗った器具はすぐに、十分に水洗いする。器具内部は流水中でブラッシングしてしっかり洗剤を除去すること。(これは極めて重要。)
    • 仕上げに純水で3回すすぐ。
    • 乾燥棚・カゴに伏せて自然乾燥、あるいは乾燥器で乾燥させる。急ぐ場合は、ガラス器具ならば105〜110℃の乾燥器に入れても良い。ただし、容量分析用のホールピペット、メスフラスコは過熱しない。

  2. ピペット類(メスピペットなど)
    • 水洗し、洗剤を含む洗浄筒に沈めて数日放置する。急ぐ場合は、超音波洗浄する。
    • 自動水洗筒をつかって水道水で数時間〜一晩水洗する。水道水を出し過ぎないこと。
    • 純水を通して十分にすすぎ、乾燥器で乾燥させた後に、滅菌缶に収納して乾熱滅菌する。

  3. 超音波洗浄器の利用
    • パスツールピペットなどの細かいガラス器具に利用できる。専用の洗剤(低発泡性)を使うことが多い。洗浄時間は3〜5分程度。
    • キュベットなど、接着して作ってあるものには使えない。(壊れる)
    • すすぎを十分にすること。

水族生化学特論20080520 Q&A

パターン認識分子としてレクチンが微生物を認識してからTollまでのシグナル伝達をどのように解明したのか?

昆虫(コガネムシ)では、同じ微生物感染によって起こるメラニン形成反応とTollを介した抗菌ペプチド発現が、上流の反応を共有していることを発見し、メラニン形成(細菌を感染させたコガネムシ幼虫が真っ黒に変色する現象)を指標に、コガネムシ体液からそれに必要なタンパク質を精製しました。5種類のセリンプロテアーゼ前駆体を精製し、それらの二つずつを反応させて作用順序を決定しました。詳しくは下記の論文を読んでみて。

Kim CH, Kim SJ, Kan H, Kwon HM, Roh KB, Jiang R, Yang Y, Park JW, Lee HH, Ha NC, Kang HJ, Nonaka M, Söderhäll K, Lee BL. A three-step proteolytic cascade mediates the activation of the peptidoglycan-induced toll pathway in an insect. J Biol Chem. 2008 Mar 21;283(12):7599-607.

 

レクチンの定義は?

古い定義(狭義)「酵素や抗体を除く多価の糖結合性タンパク質、もしくは糖タンパク質」

*例外多し:リシンはRNA-N-グリコシダーゼ活性を持つ、レクチンは必ずしも多価とは限らない(したがっていつも凝集活性を示すとは限らない)などなど。

新しい定義(広義)「糖鎖を特異的に認識して結合、架橋形成するタンパク質」

 http://www.glycoforum.gr.jp/science/word/lectin/LEA00J.html 参照

 

ユリ目レクチンの植物における機能は?動物レクチンのリガンドは微生物由来の物質だけか?内因性のリガンドがあるか?

一般に、植物においてもレクチンは外敵に対する防御的役割りを果たしていると考えられていますが、まだまだ不明な点が多いそうです。

植物・動物を問わず、生体防御以外でのレクチンの機能として考えられているものは、特定の糖鎖をもった糖タンパク質の輸送、特定の細胞間の相互作用の媒介、細胞の活性化、(これらによる発生・分化の制御)、ある種の金属イオンの輸送などです。また、生体防御レクチンが一方で、障害を受けた/壊れた自己の細胞/組織を認識できる、というデータもあるそうです。

 

どんなレクチンにも認識されない微生物、あるいはレクチンの結合を防ぐような耐性を獲得した微生物は存在するか?

 当然存在するでしょうね。

 

MBLによる糖鎖認識と補体活性化との関連、およびMBLに会合しているセリンプロテアーゼMASP1, MASP2, MASP3の機能は? 

 MBL(および哺乳類ではficolinも)が微生物糖鎖に結合すると、これらレクチンに会合していた瀬リンプロテアーゼ(MASP)が活性化型に変化し(自己触媒による)、補体系の成分を限定加水分解することによって活性化をスタートさせることができます。

MASPにはMASP1〜3がありますが、もっともよく機能がわかっているのはMASP2で、これは活性化型になると補体成分のC4C2を限定加水分解して活性化します。MASP1は、別の補体成分C3を活性化するという報告もありますが、それを疑問視する報告もあり、評価が定まっていません。また、MASP1には凝固系の因子を加水分解する活性があるとも報告されており、そうならば、MBLなどによる微生物認識によって凝固系のスイッチも入ることになります。MASP3については、その天然基質が未だに解明されていませんので、機能は全く不明です。おもしろいことに、ホヤのMASP3は主に消化管で発現しており、口の悪い人はMASP3は消化酵素だと揶揄しています(半分Joke)。魚類でも消化管でMASP3の発現が認められます。

 

魚の体表粘液は孵化したときから分泌されているか?

魚種によりますが、分泌されている例が多いはずです。孵化直後の体表粘液レクチンを調べた研究は少ないのですが、たとえばウナギの葉形仔魚(レプトセファルス)の体表にはかなり強力なレクチンが分泌されているそうです。

 

レクチンがどのようにして糖のヒドロキシル基の空間配置を認識するのか?

文章では説明が困難、、、、論文とそのFig.を見て下さい。

Ng KK, Drickamer K, Weis WI.

Structural analysis of monosaccharide recognition by rat liver mannose-binding protein.

J Biol Chem. 1996 Jan 12;271(2):663-74.

 

タンパク質を精製してアミノ酸配列や結晶構造解析を決定するのにどれくらいの期間が必要か?

精製:千差万別 1週間から数年(それでも不可能だったりして、、、)

アミノ酸配列:N末端から20残基程度なら、精製タンパク質があれば2,3日

結晶構造解析:ぜんぜん想像がつかない。結晶化に2週間から数年(それでも不可能な例もあり)。結晶ができたとすると、、、生物化学の木村先生か角田先生に尋ねてみて。

 

血清蛋白質の分画におけるPEG沈澱のメカニズムは?

最も尤もらしい説明は、PEG中の多量の水酸基がタンパク質の水和水を奪うことによってタンパク質の溶解度を下げる、というもの。でも本当のところはよくわからない。

 

タンパク質の活性部位の同定法は?

一例としては、site-directed mutagenesisという手法で、1〜数残基単位でアミノ酸変異を起こした組換えタンパク質を作って機能を解析し、特定のアミノ酸置換/欠損などによる機能変化を調べます。

また、特定のアミノ酸を修飾する試薬によってタンパク質を処理し、機能変化を調べる方法もあります。

 

レクチンは生体内にどれくらいの量の微生物が侵入してきたら働くのか?

 1個でも働くでしょう。少数ならばただちに排除されるでしょう。

 

比較免疫学的解析と生物進化

免疫系の因子について幅広い動物種についてその遺伝子を解析することにより、生物進化・分子進化に関する情報もある程度得られます。

 

非常に広い範囲の多細胞生物がレクチンを持っています。

良い解説ページがあります。

http://www.glycoforum.gr.jp/science/word/evolution/ES-C01J.html

 

魚類では体表へのレクチンの分泌が多いのはなぜか?

比較的薄くて物理的に弱い層で体表は外界と接しているために、微生物への感染防御を特に強化するように特化した、と考えられております。全身が粘膜で覆われているようなものですから。ヒトでも、皮膚よりは粘膜組織に多くの抗菌タンパク質が分泌されますね。

 

下等動物レクチンのヒトへの応用は?

どうでしょうね? もちろん可能なレクチンもあるでしょう。(たとえば、ある種のヒトデのレクチンがヒト癌細胞を特異的に認識できるかもしれない、という報告があります。)でも研究のモチベーションとしてはそれだけではありません。魚類なら、魚類の生体防御がどのような分子でどのように達成されているかを知ることによって、魚類の(たとえば養殖魚の)抗病性を向上させてより安全な魚を生産することができる、、、とか。

水族生化学特論20080513 Q&A

自然免疫と獲得免疫の協調について、どの程度確かなことがわかっているのか?それらの知見はどのような手法で明らかにされてきたのか?

問いが大きく、答えるべき事象がたくさんありすぎてとても書けません。参考書・Webを当たってみてはいかがか? キーワードは、抗原提示、サイトカイン、補体、オプソニン、抗体、NK細胞、T細胞、MHC など。

「どんな実験でどんな仮説が確かめられたか?」という問いはとても大事です。たとえば初回の講義で紹介した「精神と物質」などを読んでみてはいかがですか? 「科学者がどんな観察事実からどんな仮説を立て、それを検証するために実際にどんな実験が有効だったか/無効だったか」という例が生き生きと語られています。

 

なぜ、無脊椎動物は獲得免疫無しで生きていけるのか?

状況証拠から類推できるのは、自然免疫が感染防御に十分な機能を果たしているから、ということですが、これも証明することが困難な問いの一つです。

 

免疫学の基礎に関する説明も欲しい。

できるだけ予備知識的な話しも交えますが、時間の制約もありますので、参考書を各自で参照することも必要かもしれません。学部講義「魚類免疫学」の参考書に指定している下記の図書はコンパクトにまとまっていて便利です。

・免疫系のしくみ −免疫学入門− 大沢利昭訳 東京化学同人

・免疫学の基礎 第4版 小山次郎・大沢利昭著 東京化学同人

 

ノックアウトゼブラフィッシュの作成について詳細を知りたい。

基本的な作製原理は、ノックアウトマウスとは全く異なります。作成すると言うよりスクリーニングする、に近い。Target-selected inactivation と呼びます。詳細は下記の文献参照。

Wienholds E, Schulte-Merker S, Walderich B, Plasterk RH. Target-selected inactivation of the zebrafish rag1 gene. Science. 2002 Jul 5;297(5578):99-102.

 

Rag1遺伝子欠損によって獲得免疫が機能しないゼブラフィッシュはなぜ生存できるのか?

 

獲得免疫における抗原レセプター(無限に近い種類の抗原を特異的に認識するタンパク質=抗体やT細胞受容体)の多様性を生じる遺伝子組換えのメカニズムを詳しく知りたい。

 

円口類で見つかった抗体(のような分子)とはどのようなものか?

Leucine-rich repeatモジュールがいくつか連なった構造をとる点で、あたかも昆虫のTollや脊椎動物のToll-like receptorのようですが、遺伝子組換えによる多様性を獲得している点で、構造的にはまったく異なる抗体に類似します。詳細は別の講義時間で…

 

マウスのようにはノックアウト個体を魚で作ることができない理由は?

ES細胞と呼ばれる全能性(生殖細胞系列の)幹細胞が魚類では樹立されてないからです。

 

マンノース結合レクチンが細菌表面のペプチドグリカンを認識できるメカニズムは?

とりあえずは下記Webを参照してください。

http://www.gak.co.jp/FCCA/glycoword/LE-A06/LEA06J.html (生体防御因子コレクチン)

http://www.gak.co.jp/FCCA/glycoword/LE-B03/LEB03J.html (マンノース結合レクチンと補体系)

 

アレルギー体質は遺伝するか? 子どもの頃の食生活だけで決まる後天的なものか?

その両方が要因になると考えられてます。「体質」は親から受け継ぐでしょうが、「発症する/しない」「症状」は後天的な要因に大きく左右されます。

 

スギという魚の身は日本でも「トロカンパチ」として流通しています。

情報ありがとうございます。ネットでも関連情報を見つけました。でもこの名前ではちょっと問題ありますね。トロとカンパチはそれぞれ別の高級魚を連想させますから。命名にも規制が、、、

http://singten.air-nifty.com/arekore/2007/07/post_b9ea.html

 

環境(変動?)に強い生物は、自然免疫などの生体防御機構以外の要因があるのか?

物理的な環境への適応度は免疫とはあまり関係しないように見えますが、もしも関係してたらおもしろい。

 

獲得免疫が産生されやすい時期(特に活性が高い時期?)があるか?

ヒトの場合、免疫をコントロールするTリンパ球を成熟させる器官(胸腺)の大きさは10代後半をピークで、加齢と共に退縮しますので、それに従って獲得免疫能も下がっていくと考えられてます。

 

自然免疫において、レクチン(の構造? レパートリー? 濃度?)は人によって(個体によって)異なるか?

一人がもっているレクチンのレパートリーには個人差は無いはずですが、まれに、あるレクチンの欠損症があります。

 

抗原提示細胞とは具体的に何を指すか?

マクロファージ、Bリンパ球、樹状細胞などです。

 

ヒトが産生する抗体は、認識する抗原が異なっても同じ構造を持つか?

抗体の多様性発現機構、抗体分子の解剖学を講義する機会に説明しますが、認識できる抗原の違いは、抗原結合部位のアミノ酸配列の違いに起因します。

 

多細胞生物の系統樹には、まだまだ曖昧な点があります。

There are still several version of phylogenetic trees of metazoans. I showed one of them, in a very simplified format.

 

ヒトにおけるレクチンの生体防御機能にはどのようなものがあるか?

ある種の細菌感染やウイルス感染から身体を防御していることを示唆する報告があります。(たとえばマンノース結合レクチンを欠損すると、易感染症となる)

 

自然免疫を担う遺伝子は、ヒトゲノム中で一定の場所に集合しているのか?

必ずしもクラスターを形成しているわけではなく、さまざまな因子が様々な染色体上の多様な遺伝子によってコードされています。(No particular clustering of innate immunity genes.

 

円口類(無顎類)の抗体様分子はリンパ球で産生された後に分泌されるか?また、この分子のホモログは軟骨・硬骨魚類にも存在するか?

分泌されることが最近報告されました。この分子は今のところ円口類でしか見つかっていません。

 

TollToll-like receptorは違うもの?

どちらもLeucine-rich repeartドメインからなるI型膜蛋白質ですが、単にTollと言うと、節足動物に存在するものを指し、それにホモロジーを示す脊椎動物のタンパク質をToll-like receptorと呼びます。機能的に類似点がありますが、決定的に異なる点もあります。後日話す機会があります。

マウスや魚類から抗体を精製することは可能か? 魚類抗体をヒトに投与して機能させることは可能か?

精製は可能。水産の学生実験で扱ったような、、、、 魚類抗体をヒトに投与する応用が有効かどうかわかりませんが、ニワトリ抗体(特に卵黄に分泌されるIgY)のヒトへの応用は検討されています。

 

人が「免疫力が落ちている」と表現する状態は、獲得・自然免疫のどちらの機能が落ちているのか?

どちらの場合もあり得るし、両方の場合もあるでしょう。一概には言えない事柄です。

 

2009年4月17日金曜日

動物生化学Q&A 081125

難しい科学英語ばかりで理解に時間がかかりそう。試験でも物質名を英語表記することがあるか?

日本語の表記はテキスト中の図にありますのでそちらを見て下さい。

試験で英語名(英語表記)で回答することを求めないつもりです。科学英語の授業ではないので英語力を問うことはありません。でも日頃からできるだけ英語表記に接して英語表記に慣れると今後大いに役立ちます。そんな日常の習慣をつけるといいなぁ、という意味で、敢えて英語のスライド・プリントを使いました。

 

ペントースリン酸経路にXu5Pの生産までが含まれるか?

はい。授業では特に注目・説明しませんでした。Ru5Pから生成されるR5PXu5Pの比は、細胞によって異なります。(p284、「B.段階2」参照)

 

糖新生の役割りがわからなかった。

通常は解糖によるエネルギー生産に必要なグルコース(およびG6P)はグリコーゲンの分解で供給されるますが、絶食/飢餓時などグリコーゲンからのグルコース供給が途絶えた時に、アミノ酸(アラニン、アスパラギン酸等)、乳酸、グリセロールといった炭素源からグルコースを合成するのが糖新生です。グルコースを合成するためのエネルギーは、主に脂肪酸の酸化によって得られます。糖新生はおもに肝臓で(一部腎臓でも)行われ、作られたグルコースは血流に乗って体中に運ばれます。

 

肝臓のグリコーゲンだけでどれくらい生きられるか?

複数のWebページからの情報によれば、肝臓のグリコーゲンは、たった1日の絶食(状況によっては一晩眠っている間に主に脳によって)ほとんど消費されてしまうそうです。そのために糖新生によって糖以外の物質からグルコースが合成されます。

 

グルコース-1-リン酸(G1P)の構造式を描いたが、答えを教えて欲しい。

p294 15.7にあります。

 

解糖系と糖新生の反応にかかる時間は変わらないのか?

それぞれの経路用の基質濃度、酵素活性で変動します。

 

グリコーゲン分子の還元末端側のグルコース単位とグリコゲニンとの結合様式は?

グリコゲニンは重要か?(って試験に出すかという質問?)

Box15.3p 298)は重要か?(って試験に出すかという質問?)

グリコゲニン(37 kDaのタンパク質)は自身のTyr194194番目のチロシン残基)の水酸基にUDP-グルコースからグルコースを転移させる酵素活性を持ちます。従って、グルコースの1位の炭素を介してグリコゲニンに結合してます。(p 310, 15-32中で糖受容体RがグリコゲニンのTyr194だと考えればよい。)グリコゲニンは、結合したグルコースの4位に、さらにUDP-グルコースからグルコースを加えてグルコース鎖(α14)をのばす活性も示し、これによって新規グリコーゲン分子の生合成が始まります。鎖長が8〜10まで伸びると、グリコーゲンシンターゼによる更なる伸張と、分岐酵素による分岐化が進みます。以上は付加情報です。出題範囲とはいいませんが、知っておいて損はないでしょ?

 

解糖と糖新生を個別に制御する意味とメカニズムは?

p 309右カラムの、C.糖新生の調節 を参照して下さい。別々の反応経路になっている理由は、途中に「発エルゴン反応=自発的な不可逆反応」段階を含むので、同じ経路では逆向きの反応を進めることができないからです。

 

グリコーゲン生合成において、ホスホリラーゼが活性化して分解側に進むのならばグリコーゲンができないのではないか?

グルカゴンなどのホルモンによってcAMP依存的プロテインキナーゼAがホスホリラーゼキナーゼを活性化

→リン酸化によってホスホリラーゼが活性化&グリコーゲンシンターゼを不活化

→グリコーゲン分解↑&グリコーゲン合成↓

となります。

逆にインスリンによって、プロテインホスファターゼ活性が上昇

→脱リン酸化によってホスホリラーゼが不活化&グリコーゲンシンターゼが活性化

→グリコーゲン分解↓&グリコーゲン合成↑

 

グリコーゲンのα1,6グルコシド結合による分岐点に残った1残基のグルコース単位が除去されるところがわかりにくかった。

このグルコース残基は、脱分岐酵素によって加水分解され、グルコースとして遊離します。

 

グリコーゲン分解で生じたG6Pはα型やβ型をとるのか?

αアノマーになります。

 

グルコース-3-リン酸という物質はないのか?

あります。

 

G1PからUDPグルコースが作られる反応がわからなかった。

p296の図15-9を参照しましょう。この反応を触媒する酵素はUDPグルコースピロホスホリラーゼ。