2009年5月20日水曜日

魚類免疫学Q&A 090513

無脊椎動物の補体のメカニズムは哺乳類のものと同じか?
哺乳類と異なる点は、
1.補体が直接標的細胞を殺す活性を持たないこと。(C5〜C9がないので)
2.抗体を持たないので、古典経路がないこと。
まだまだあるでしょうが、それは現在調査中。

補体による細胞傷害を受けた細胞は、その後白血球に食べられたりするのか?
粒子状の異物が生きていようが死んでいようがそのまま体内に放置されることはなく、食細胞で処理されます。

C3といろんな(活性化)経路との繋がりがピンと来ない。
C3を活性化するためには、C3→C3a + C3bに分解する特異的なプロテアーゼが必要。そのプロテアーゼを形成する反応が、各活性化経路です。C3bは溶解経路(=細胞傷害経路)の最初の成分C5を活性化するために働きます。

補体は血清中にしか存在しないか?
その他の体液にも存在すると考えられますが、血清中とまったく同じ状態かどうかは分かりません。

カブトガニは食べるとどんな味がするのか?
私は食べたことがないので、理学部の川畑先生に聞いてみましたよ。下記がそのお返事です。
-------- Original Message --------
Subject: Re: 質問
Date: Fri, 15 May 2009 13:04:14 +0900
From: Shun Kawabata
Reply-To: skawascb@kyudai.jp
To: mikimnakao@kyudai.jp

中尾様

中国、タイなどではいまでも料理屋さんで出るそうです。たしか生化学工業の方
が中国で食べたことがあるようなことを聞いたことがあります。食べる部位は、
カニみそに相当する肝すい臓です。中国料理の場合、香辛料をかなり混ぜるよう
ですので、あまり本来の味ではないでしょうが、食感はたぶんカニみそでしょ
う。筋肉はカニとちがってほとんどついていませんので、食べるところはないで
しょう。

川畑俊一郎


白血球を計数は、(水族生化学の?)研究室でよく行われる実験か?
食作用活性を測る以外にも、リンパ球の増殖を調べるなど、しばしば白血球を計数しています。(杣本先生が専門家)

C3から第二経路に進むときにどんな反応が起こるのか?
説明を端折りました。かなり複雑なので。

補体を持たない動物は代わりにどんな物質を用いているのか?
抗菌ペプチドの殺菌作用、ある種のレクチンによるオプソニン作用が考えられます。また、昆虫などではフェノールオキシダーゼ系による殺菌機構も備わっています。(微生物感染や傷に応答してメラニンを合成する途中で、様々な抗菌性の分子が産生される。)

補体の大腸菌への結合は大腸菌が細胞に結合する機構に似ている?
そうでもない。大腸菌が宿主?細胞に結合するのは、かなり特異的な受容体タンパク質を介して、非共有結合的な相互作用によります。

補体をもつ生物どうしで補体を比較すると何が見られるか?(=どんなことがわかるか?)
種を越えて大事な補体の基本的な反応機構と機能。各動物の生育環境に応じた補体の進化。

補体の膜侵襲複合体によって孔を明けられて死んだ異物はどのように観察されたか?
電子顕微鏡で観察されてます。補体だけで孔をあけられて簡単に死んでしまう細菌は、実は少なくて、多くの病原性細菌はなかなか死なない。(だからこそ病原性なのかもね。)

C3以外の補体の分子的仕組も気になった(=C3以外の補体成分の反応の仕組みにも興味が湧いた?)C3のC3aとC3bへの限定加水分解のメカニズムをもっと詳しく知りたい。
各活性化経路で、C3に対して非常に特異的なプロテアーゼ複合体が形成されます。
詳しくは、参考書とWeb情報を。
http://ja.wikipedia.org/wiki/補体
http://www.med.hokudai.ac.jp/~bac-w/
「免疫学の基礎」(小山・大沢)東京化学同人
http://www.amazon.co.jp/免疫学の基礎-小山-次郎/dp/4807905996
極めたい人は、「水族生化学分野で卒論・修論・博士論文研究を行う。」

C3の立体構造について知りたい。
参考文献
Janssen BJ, Huizinga EG, Raaijmakers HC, Roos A, Daha MR, Nilsson-Ekdahl K, Nilsson B, Gros P. Structures of complement component C3 provide insights into the function and evolution of immunity. Nature. 2005 Sep 22;437(7058):505-511


C3分子の立体構造(リボンモデル):C3とC3bの立体構造模式図(C3中の△、C3b中の赤点がチオエステル部位。かなり位置が変化している。)

C3がα鎖とβ鎖に別れてジスルフィド結合していることには何か意味があるのか?
立体構造を見ると、αとβに別れているので、それぞれが都合の良い空間配置を取って、機能部位を必要な位置に定位させているようです。αとβに分離してない、未成熟なC3(proC3)はまったく活性を示しません。

異物の表面以外にもOH基はありそうだと思うが、そこにはエステル結合することはないのか?
(Good question! スルドイ。)
原理的にはあります。C3bのチオエステル自体は、水酸基なら何でも結合します。ただし、自分の細胞上には、仮にC3bが結合しても直ちに分解してしまうようなタンパク質が発現していますので、自己細胞に多量のC3bが結合することを防いでいます。ただし、傷ついた組織やある種の自己免疫疾患やアレルギーではこのような制御が効かず、補体によって自分の組織が損傷を受ける場合があります。

補体の膜逆侵襲複合体の構造が興味深かった。(この形成過程がよく分からなかった。)
1.C5は活性化されてC5bになると、疎水的な残基を表面に露出して標的細胞膜に疎水的に付着する。
2.C6、C7はC5bに親和性を示し、標的細胞に付着したC5bに非共有結合的にくっつき、立体配座(コンフォメーション)を変化させる。
3.C8はコンフォメーションが変わったC6やC7に親和性を示して結合し、自らのコンフォメーションを変化させ、さらに標的細胞膜の脂質二重層に埋まり込む。
4.多数(4〜8分子)のC9が、脂質二重層に挿入されたC8に親和性を示して、集合し、C9同士も凝集してコンフォメーションを変え、疎水性の表面を顕し、脂質二重層にさらに埋まり込んで膜に孔をあける。
……って誰か見てきたみたいな説明が教科書にのってます。

C3は一度結合したら外れないのか? 水と結合した後でさえもリサイクルしないとなると相当量のC3が血清中には存在するのだろうか?
自然には外れませんが、血清中にC3bを分解するプロテアーゼが備わっているので、徐々に分解されます。それでもチオエステル部位で共有結合した部分は残ります。 活性化される前のC3のチオエステルはそれほど水などの水酸基とは反応しません。C3bに分解されると、チオエステル部位が露出して反応性となります。一度C3bになっても異物に結合し損なうと、水と反応してさらに前述のプロテアーゼによって分解されますので、推察するようにC3は沢山必要とされます。血清濃度の高いタンパク質の一つです。(1 mg/ml)

今回の授業の内容はヴォートで勉強できるか?
ヴォートには補体の記述はありませんが、プロテアーゼの構造と機能、タンパク質の機能(II)などの章は、補体の反応を理解する基礎として重要です。

EDTAの正式名称は? キレートとは?
Ethylenediaminetetraacetate   キレート=chelate
http://ja.wikipedia.org/wiki/キレート
http://ja.wikipedia.org/wiki/エチレンジアミン四酢酸

なんで教授はMacを使う人が多いのか?
さて? 私は(1)昔から慣れているので (2)Winが嫌いなので(使いにくいと感じる) (3)Microsoftとビルゲイツが嫌いなので などの理由。以前はよくFreezeして呪っていたが、OS10.4からはとても安定していて安心感があります。

C3aの濃度勾配を、白血球はどのように認識するのか?
C3aを特異的に認識する受容体が細胞表面に発現していて、それにC3aが結合すると細胞の運動性が増す。

Mr. ビーンが好き?
古い作品は好きです。なかなかいいね、Rowan Atkinson。
http://en.wikipedia.org/wiki/Rowan_Atkinson

補体の成分はC1-C9の9種類だけ?
他にもあります。哺乳類だと全部で30種くらい。

サンダーバードのパロディーのウケは国によって大きくことなる?
よくわからないけど、アジアでウケたことはない…

プリントに要点しか書いて無くて、詳しい内容を復習するときに使いづらい。
補足情報は私の講義を聴きながら自らノートをとるなどしてください。必要なら質問する/参考書を参照するなども吉。

マツカサ病の治療法は?
立鱗病(運動性エロモナス症)ですか、、よくわかりませんので、下記Webを参照して。
http://www7.ocn.ne.jp/~ranncyuu/eromonasu.html

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