2009年5月26日火曜日

水族生化学特論Q&A 090519

生体がいくつかの経路を用意していて異物によってそれらの経路を使い分けているのか?
基本的にはその通り。1:1の対応があるわけではない。

採血後のコイを食べるのか? あるいは他の実験に使う?
気が向くと食べます。洗い、こいこく(お味噌汁)。でも一度に沢山のコイ(30〜40尾)から採血すると、料理どころではない場合が多い。採血やお昼ご飯でこちらにお世話になってます。(広松養魚場)
http://www7.ocn.ne.jp/~hiromatu/

求愛遺伝子の変異がどのように求愛行動の異常を引き起こすのか?
記事を引用すると、
”2008年09月18日 雌への求愛などの性行動を活発にする遺伝子を発見
雄の求愛などの性行動 脳の“司令塔”を特定
 雌への求愛など、性行動を“男らしく”している脳細胞を、東北大大学院と北海道教育大の研究グループがショウジョウバエで特定した。約10万個の脳細胞のうち特定の場所に形成される20個ほどの「雄型細胞群」が雄の性行動の司令塔となっていた。11日付の米科学誌「ニューロン」に発表した。
 東北大大学院生命科学研究科の山元大輔教授らは、脳細胞のごく一部を雄型に性転換させた雌のキイロショウジョウバエを205匹作り、性行動を調べた。
 1匹ずつ正常な雌と“お見合い”させると、205匹中16匹が雄特有の求愛行動を起こした。性転換した脳の領域を調べると約20個の脳細胞がほぼ共通していた。他の細胞が「完全な雌」でも、この20個の雄型細胞群を組み込んだショウジョウバエは雄としてふるまった。
 これまでの研究で、ショウジョウバエの性決定にかかわる2つの遺伝子が分かっており、連携して雄型の神経回路と雌型の神経回路を作り分けているという。今回の成果で、脳細胞の生物学的な違いが行動の性差のもとになっていることが分かった。研究グループの北海道教育大の木村賢一教授は、「ショウジョウバエで見つかった脳細胞の性差は、ヒトの意識や行動に現れる男女差を解明し、客観的に理解するうえでも大きなヒントになるだろう」と話している。”
詳細は山元大輔教授の著作を探してみて下さい。

H1N1 Flu(=トンフルって言うんですか?)に罹った人はこのインフルエンザに対する免疫ができるのか?
当然できるでしょうね。実際に自然に感染してできた免疫は強くて長持ちでしょう。あ、鳥インフルは”トリフル”ってわけね。じゃあ、人々のインフルエンザということで”民フル”? 「あー寒い」

H1N1 Fluに罹ったら、これを認識する新しいレクチンができるか?
レクチンは創造されません。抗体やT細胞受容体などの獲得免疫による抗原レセプターを作るリンパ球クローンが体内で樹立されます。

様々なファミリーのレクチンが体表に分布した方が、病原体に認識スペクトルが広がって生残に有利に働くのか?
そのように考えられていますが、それを証明するのは簡単ではないですね。

レクチンの明確な定義は?
糖鎖結合タンパク質(ただし、抗体とグリコシダーゼを除く)
http://www.glycoforum.gr.jp/science/word/lectin/LEA00J.html

MBLの他の糖でのアセチル基への結合性は調べられているか?
GlcNAcとGalNAcだけです。

Lily型レクチンがフグに存在するのとは逆に、フグの遺伝子に似た遺伝子がユリのゲノムに持ち込まれているようなことはないか?
おもしろいですね。でも今のところ見つかっていません。

ある種のレクチンが補体を活性化することはわかったが、その補体の活性化が免疫にどのように関わるのか?
補体が活性化されると、微生物に対する食細胞の活性があがったり、炎症が起きたり、さまざまな反応が進みますが、詳細は別の回の授業で。

ではいったいficolinは何を認識しているのでしょう? アセチル基? β-1,3-グルカン?
わかりません。β-1,3-グルカン中に一部アセチル基が含まれているのか、その他の官能基がたまたまアセチル基と似た立体構造を取るようになるのか?

コイもゼブラフィッシュと並んでモデル動物としてよく使われるか?
細胞やタンパク質などを使った実験にはよく使われますが、ゲノムが大きいので(2n=100で全ゲノムサイズはヒトの約半分)ゲノムプロジェクトの対象にはなっていません。

メス決定遺伝子は存在するか?
動物によって性決定の仕組みはさまざまなので一概にはいえませんが、メス決定遺伝子というのを、私は聞いたことがありません。(知らないだけかも)こちらあたりをとっかかりにして調べてみたら?
http://www.biological-j.net/blog/2008/01/000376.html    そもそも性が遺伝的に決まらない生物もあります。

レクチン(MBLやficolin)が糖鎖に結合すると、それらに会合しているプロテアーゼ(MASP)がどのように活性化されるのか?
会合した分子全体の立体配座が変化し、その力によってMASPの前駆体が弱いながらもプロテアーゼ活性を示すようになり、近傍のMASPを活性化型に加水分解してから、その活性化型によって本格的に補体の活性化が進む(自己活性化)というシナリオが受け入れられています。

マンノース結合レクチンとガラクトース結合レクチンの存在は、陸上と水中など、生息環境の違いを反映しているのか?
そのように推察していますが、支持する実験データはまだありません。

魚類の他に、体表にレクチンを発現している動物はいるか?
単純な例ではナメクジやプラナリアなど。
http://www.j-tokkyo.com/2002/C07G/JP2002-356493.shtml

遺伝子の命名ルールは?
http://ja.wikipedia.org/wiki/遺伝子命名法

Fakelin研究のその後は?
地道に、どんな微生物に結合できるか?を調べます。(3−4種の細菌・酵母を試したが全く結合せず、、、、)

魚類免疫、特にレクチンの解明の今後の展開は?
特に、体表や消化管内での感染防御と免疫応答における役割りを解明し、魚類ワクチンの効果増強などに役立てる。

抗体による微生物の認識も糖鎖の認識によるのか?
糖鎖を認識する抗体もあります。

レクチンはグラム陰性菌と陽性菌の細胞壁構造の違いを見分けるか?
見分けるレクチンもあります。(ペプチドグリカンの細かい構造の違いによる。)

MBLやficolinのコラーゲン様ドメインは、コラーゲンとどのように似ているのか?
G-X-Yという繰り返しアミノ酸配列を含み、実際に三本鎖らせん構造をとっていること。

レクチンの糖鎖結合ドメイン一つと糖鎖の結合は弱い(親和性が低い)とのことだったが、その親和性自体を上げることが可能か?
劇的には上がらないでしょう。そもそも限られた数の水素結合か疎水的相互作用をするだけなので。

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