糖鎖は確かに細胞表面の受容体として重要な場合があります。タンパク質の糖鎖修飾もそのタンパク質の機能に大きく影響する場合があります。タンパク質の(翻訳後)修飾には、糖鎖付加の他にも、脂質が結合したり、リン酸化・硫酸化など多様な現象があり、それぞれ重要な場面がありますので、調べてみて下さい。
(キーワード:糖タンパク質、リンタンパク質、タンパク質リン酸化、タンパク質硫酸化、リポタンパク質)
なぜコラーゲンは三重らせんを作るのか?
http://www.org-chem.org/yuuki/collagen/collagen.html
ヒトと魚類の免疫は、どのくらい相動性があるか?
「相同性」という言葉の意味にはいろいろありますが、ヒトと魚類の免疫機構がどのような因子や細胞で構成されているかを、おおざっぱに表現すれば、「お互いによく似ている」と言えます。
免疫系で働くタンパク質のアミノ酸配列(あるいはそれらをコードする遺伝子の塩基配列)がどれくらい似ているか?という意味ならば、千差万別です。ヒトと魚類の間で、80%同じ配列を保持する遺伝子もあれば、20%以下しか配列が似ていない遺伝子もあります。
リゾチームは酵素なので、触媒として働くから、自分自身が細菌に結合して消費されたりはしない?
基本的にはその通り。
洗剤に配合される酵素のように、タンパク質を常温でも安定であるようにするにはどのような改良が成されるか?
おおざっぱに言えば、タンパク質のフォールディング(折り畳み)に関与して、三次構造を保持している化学結合・分子間相互作用を強くする。たとえば、水素結合は比較的熱に弱いので、適度にジスルフィド結合を入れるとか、イオン結合を強くするために、それを形成する荷電アミノ酸間の距離を短くするなど。しかしながら、これを研究する専門家でも、耐熱化のデザインは難しいらしい。
参照 http://www.nanonet.go.jp/japanese/mailmag/2004/056a.html
抗菌ペプチドが真核生物と原核生物の細胞膜を電荷の違いで見分ける詳しいメカニズムが知りたい。
4/23のプリントに示したようなメカニズムが提唱されていますが、それだけではないでしょう。たとえば、細菌が産生する、他の細菌に対する抗菌ペプチド(たとえばバクテリオシン)は異なる標的認識機構を持つそうです。
http://www.agr.kyushu-u.ac.jp/biosci-biotech/biseibutu/bacteriocin_intro.html
*ヒトの抗菌ペプチドに関する簡単な解説はこちら
http://allatopy.wakabagari.com/yougo/yougo29.html
α2マクログロブリンは細菌のプロテアーゼを阻害するほかに、非特異的に宿主のプロテアーゼを阻害することはないのか?
確かに宿主のプロテアーゼも非特異的に阻害します。それは宿主にとってプロテアーゼによって始まる様々な生体内反応の制御を担うという意味で、むしろ重要であると考えられます。α2マクログロブリンは消化管には分泌されないので、トリプシンやキモトリプシンによる食物タンパク質の分解を妨げることはありません。
なぜ、カブトガニタキレクチンはアセチル基を認識するだけで目的物(微生物)を認識できるのか?
タキレクチン分子中にある5カ所のアセチル基結合部位のひとつひとつの結合親和性は低いが、5カ所全てがアセチル基に結合すると、総和として高い結合力となる。このような5カ所全てが結合できる環境は、タキレクチンの周りにたくさんのアセチル基が分布していることが必要で、そのような環境の代表例が、たとえばN-アセチルグルコサミンの繰り返し構造をとる細菌のペプチドグリカンである。一方、自身の糖タンパク質の糖鎖には、それほど高密度にN-アセチルグルコサミンは分布していないので、高い結合力では結合しない。
グラム陰性菌とグラム陽性菌の、細胞壁構造以外の違いは?
グラム陰性・陽性は、グラム染色法における染色性の違いで区別され、それは細胞壁およびその外部構造の違いに起因します。そのほかの、生理的な活性や呼吸特性で両者は明確には区別されません。また、グラム染色自体に不応性(染まらない)あるいは不定性(陽性・陰性がまだらに染まる)の細菌も存在します。
風邪薬に含まれるリゾチームが鼻汁などのムコ多糖を分解する意義は?
粘度が高い鼻汁や膿などのムコ多糖を分解して粘度を下げ、体外に排出しやすくする効果が謳われています。(たとえば痰が切れやすくなる。)
自然免疫は、細菌などの原核生物の他に真核生物である異物(例えばカビ)をどのように認識できるか?
真菌の細胞壁に存在するβ-1,3-グルカンを、レクチンやそのほかの自然免疫因子が認識して、攻撃することができます。
参照 http://ja.wikipedia.org/wiki/Β1,3-グルカン
リゾチームは、なぜ不必要に高い耐熱性を獲得したのか不思議。
本当に不思議ですねぇ。
インターフェロンはなぜ肝炎などのウイルス感染症に効果があるのか?
肝炎などの治療に使われるインターフェロン(IFN)はIFNαまたはβですが、これらは細胞に作用すると、ウイルスのmRNAを分解する酵素を活性化したり、ウイルスタンパク質の合成に必要な因子を失活させたりして、細胞におけるウイルスの増殖を阻害します。また、NK細胞やT細胞(後に講義で触れます。)などの免疫担当細胞を活性化し、ウイルス感染細胞の除去を助けます。
インターフェロンの副作用はなぜ生じるか?
C型肝炎の治療にインターフェロンが使われる場合がありますが、発熱・全身倦怠感・関節痛などの副作用はほぼ必発なのだそうです。IFNは、広く免疫系の細胞を刺激して炎症反応を誘起することが、副作用の発現に大きく影響すると考えられています。
参照 http://ja.wikipedia.org/wiki/インターフェロン
レクチンは糖鎖に対してしか働かないか?
基本的には、糖鎖を認識して結合します。が、二次的に糖鎖以外の物質(タンパク質など)と相互作用して機能を発揮することもあります。たとえば、マンノース結合レクチンと呼ばれるコレクチンの1種は、微生物糖鎖と結合する一方で、分子内の別の部位で、貪食細胞(強い食作用をもつ白血球)上の特異的レセプタータンパク質とも結合します。(その結果、結合した微生物が貪食されやすくなる。)
貪食がどのようなものかわかりにくかった。
次回かその次の回に、貪食細胞の働きについてより詳細に講義します。とりあえず、貪食の様子を説明する絵を示します。
免疫系が間違って自分(宿主)を攻撃してしまうことはないか?
そのような場合もあります。後に紹介する機会があると思います。
(キーワード:自己免疫疾患、アレルギー)
化学構造式、反応式など、図を多用して説明して欲しい。
できるだけそのようにします。今後ともいろんな要望をどうぞ。
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