パターン認識分子としてレクチンが微生物を認識してからTollまでのシグナル伝達をどのように解明したのか?
昆虫(コガネムシ)では、同じ微生物感染によって起こるメラニン形成反応とTollを介した抗菌ペプチド発現が、上流の反応を共有していることを発見し、メラニン形成(細菌を感染させたコガネムシ幼虫が真っ黒に変色する現象)を指標に、コガネムシ体液からそれに必要なタンパク質を精製しました。5種類のセリンプロテアーゼ前駆体を精製し、それらの二つずつを反応させて作用順序を決定しました。詳しくは下記の論文を読んでみて。
Kim CH, Kim SJ, Kan H, Kwon HM, Roh KB, Jiang R, Yang Y, Park JW, Lee HH, Ha NC, Kang HJ, Nonaka M, Söderhäll K, Lee BL. A three-step proteolytic cascade mediates the activation of the peptidoglycan-induced toll pathway in an insect. J Biol Chem. 2008 Mar 21;283(12):7599-607.
レクチンの定義は?
古い定義(狭義)「酵素や抗体を除く多価の糖結合性タンパク質、もしくは糖タンパク質」
*例外多し:リシンはRNA-N-グリコシダーゼ活性を持つ、レクチンは必ずしも多価とは限らない(したがっていつも凝集活性を示すとは限らない)などなど。
新しい定義(広義)「糖鎖を特異的に認識して結合、架橋形成するタンパク質」
http://www.glycoforum.gr.jp/science/word/lectin/LEA00J.html 参照
ユリ目レクチンの植物における機能は?動物レクチンのリガンドは微生物由来の物質だけか?内因性のリガンドがあるか?
一般に、植物においてもレクチンは外敵に対する防御的役割りを果たしていると考えられていますが、まだまだ不明な点が多いそうです。
植物・動物を問わず、生体防御以外でのレクチンの機能として考えられているものは、特定の糖鎖をもった糖タンパク質の輸送、特定の細胞間の相互作用の媒介、細胞の活性化、(これらによる発生・分化の制御)、ある種の金属イオンの輸送などです。また、生体防御レクチンが一方で、障害を受けた/壊れた自己の細胞/組織を認識できる、というデータもあるそうです。
どんなレクチンにも認識されない微生物、あるいはレクチンの結合を防ぐような耐性を獲得した微生物は存在するか?
当然存在するでしょうね。
MBLによる糖鎖認識と補体活性化との関連、およびMBLに会合しているセリンプロテアーゼMASP1, MASP2, MASP3の機能は?
MBL(および哺乳類ではficolinも)が微生物糖鎖に結合すると、これらレクチンに会合していた瀬リンプロテアーゼ(MASP)が活性化型に変化し(自己触媒による)、補体系の成分を限定加水分解することによって活性化をスタートさせることができます。
MASPにはMASP1〜3がありますが、もっともよく機能がわかっているのはMASP2で、これは活性化型になると補体成分のC4とC2を限定加水分解して活性化します。MASP1は、別の補体成分C3を活性化するという報告もありますが、それを疑問視する報告もあり、評価が定まっていません。また、MASP1には凝固系の因子を加水分解する活性があるとも報告されており、そうならば、MBLなどによる微生物認識によって凝固系のスイッチも入ることになります。MASP3については、その天然基質が未だに解明されていませんので、機能は全く不明です。おもしろいことに、ホヤのMASP3は主に消化管で発現しており、口の悪い人はMASP3は消化酵素だと揶揄しています(半分Joke)。魚類でも消化管でMASP3の発現が認められます。
魚の体表粘液は孵化したときから分泌されているか?
魚種によりますが、分泌されている例が多いはずです。孵化直後の体表粘液レクチンを調べた研究は少ないのですが、たとえばウナギの葉形仔魚(レプトセファルス)の体表にはかなり強力なレクチンが分泌されているそうです。
レクチンがどのようにして糖のヒドロキシル基の空間配置を認識するのか?
文章では説明が困難、、、、論文とそのFig.を見て下さい。
Ng KK, Drickamer K, Weis WI.
Structural analysis of monosaccharide recognition by rat liver mannose-binding protein.
J Biol Chem. 1996 Jan 12;271(2):663-74.
タンパク質を精製してアミノ酸配列や結晶構造解析を決定するのにどれくらいの期間が必要か?
精製:千差万別 1週間から数年(それでも不可能だったりして、、、)
アミノ酸配列:N末端から20残基程度なら、精製タンパク質があれば2,3日
結晶構造解析:ぜんぜん想像がつかない。結晶化に2週間から数年(それでも不可能な例もあり)。結晶ができたとすると、、、生物化学の木村先生か角田先生に尋ねてみて。
血清蛋白質の分画におけるPEG沈澱のメカニズムは?
最も尤もらしい説明は、PEG中の多量の水酸基がタンパク質の水和水を奪うことによってタンパク質の溶解度を下げる、というもの。でも本当のところはよくわからない。
タンパク質の活性部位の同定法は?
一例としては、site-directed mutagenesisという手法で、1〜数残基単位でアミノ酸変異を起こした組換えタンパク質を作って機能を解析し、特定のアミノ酸置換/欠損などによる機能変化を調べます。
また、特定のアミノ酸を修飾する試薬によってタンパク質を処理し、機能変化を調べる方法もあります。
レクチンは生体内にどれくらいの量の微生物が侵入してきたら働くのか?
1個でも働くでしょう。少数ならばただちに排除されるでしょう。
比較免疫学的解析と生物進化
免疫系の因子について幅広い動物種についてその遺伝子を解析することにより、生物進化・分子進化に関する情報もある程度得られます。
非常に広い範囲の多細胞生物がレクチンを持っています。
良い解説ページがあります。
http://www.glycoforum.gr.jp/science/word/evolution/ES-C01J.html
魚類では体表へのレクチンの分泌が多いのはなぜか?
比較的薄くて物理的に弱い層で体表は外界と接しているために、微生物への感染防御を特に強化するように特化した、と考えられております。全身が粘膜で覆われているようなものですから。ヒトでも、皮膚よりは粘膜組織に多くの抗菌タンパク質が分泌されますね。
下等動物レクチンのヒトへの応用は?
どうでしょうね? もちろん可能なレクチンもあるでしょう。(たとえば、ある種のヒトデのレクチンがヒト癌細胞を特異的に認識できるかもしれない、という報告があります。)でも研究のモチベーションとしてはそれだけではありません。魚類なら、魚類の生体防御がどのような分子でどのように達成されているかを知ることによって、魚類の(たとえば養殖魚の)抗病性を向上させてより安全な魚を生産することができる、、、とか。
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