2009年4月16日木曜日

魚類免疫学080521 Q&A

骨髄でできた造血幹細胞からB細胞、T細胞に分化する場所は?

B細胞は骨髄にとどまって成熟するのに対し、T細胞になる幹細胞は胸腺に移動し、そこで成熟T細胞に分化します。

 

ある1種の抗原に対して、「どのクラスの抗体が産生されやすいか」に個体差があるか?

あります。それ故に、たとえば同じ抗原に対してIgEを産生してアレルギーになりやすい人がいたりします。そのほかのクラスについても、個体差はあるでしょう。

 

アナフィラキシーショックは、クラススイッチと関係があるか?

ある場合も無い場合もあります。アナフィラキシーショックは主にIgE抗体によって引き起こされますので、IgEへのクラススイッチはアナフィラキシーショックと関係すると言えます。ただし、クラススイッチそのものがアナフィラキシーを引き起こすわけではありません。

ショックについての解説はこちら→ http://ja.wikipedia.org/wiki/ショック

 

IgE濃度が高いことがアレルギー体質であるということか?またこの形質は先天的か?

寄生虫感染(IgE濃度を高める)があまり認められない現代では、IgE濃度が高いことは、アレルギー体質であることの指標であると解釈されています。先天的な側面もありますが、環境要因やその他の生理状態による影響も大きいでしょう。

 

B細胞とT細胞の割合は、平常時と感染時で変動するか?また、感染時におけるBT各細胞の増殖のしかたに違いがあるか?

変動します。それは抗原の種類によって異なり、傾向は一概には言えませんが。(相対的にT細胞の増殖が刺激される場合も、その逆もある。)

 

クラススイッチのメリットはなにか?

IgMよりはIgGIgAの方が分子量が小さく、合成しやすいためにたくさん作ることができる。また、クラスを変えることにより、必要な場所に適した、必要な機能をもった抗体を作ることができて、生体防御反応の効率がよい、と推測されています。

 

ヒトではIgMが一次応答で主に働くのか?抗体産生の一次応答で最初にIgMが作られる理由は?

はい。遺伝子の構造がそのようにプログラムしています。今日、その仕組みを説明します。

 

IgDIgGの構造の違いがよくわからなかった。

いずれもH鎖に3つのCHドメインを含みますが、各CHドメインの配列は、IgDIgGの間で異なります。

 

抗体と顎の関係は?

直接はありませんが、無顎類の祖先が有顎脊椎動物の祖先に進化する際に、ゲノム全体が倍加したと考えられています。その時に増えた遺伝子の中に、顎を形成するのに必要な遺伝子の祖先系や、抗体などの獲得免疫関連遺伝子の祖先系があったという、時間的な一致は考えられます。


硬骨魚類のIgDがリンパ球の膜上に存在するということは、抗原とリンパ球が抗体を介して直接結合するのか?

そうです。IgDIgMは膜型としても存在します。その状態では、Bリンパ球がこれら膜型抗体を介して異物(抗原)に結合します。その刺激が続くと、Bリンパ球が抗体産生細胞に分化し、分泌型抗体を作るようになります。

 

なぜ寄生虫(蟯虫)感染者が家族に一人でも発生したら家族全員が駆虫薬を飲まなければならないのか?

一緒に生活している家族には、さまざまな経路で経口感染している可能性が考えられるからです。蟯虫の卵がついた手で触った食器その他のものを介して別の人の手経由で口から卵がうつる?

 

抗体は抗原と反応するために可変部を変えて抗体として機能する、ということはどんな抗原に対しても抗体を作ることが可能なのか?

体内に入ってきた抗原に合わせて既存の抗体の構造を変化させているわけではありません。(←セントラルドグマに反する。)抗体に限って言えば、実質的にあらゆる構造の抗原に結合できるほどのレパートリーをもつ抗体を産生できるB細胞のレパートリーを備えており、何らかの異物が侵入してきたら、それに合う抗体を産生するB細胞集団(クローン)が選択的に増殖・分化して特異的な抗体を産生する。という仕組みです。

 

キメラ抗体の機能と利点は?

狙っている機能は、1分子の抗体で異なる抗原間を架橋することです。利点は、、、、それを利用できる場面があるか?ということですね。どんな応用が可能か考えてみてはいかがか?異なる物質・細胞をそれぞれ特異的に見分けて結合し、両者を架橋させることができたらどんなことが可能になるでしょう?

 

抗体のクラスの違いによる定常部のアミノ酸配列の違いと、生体内での反応・機能の違いとの関連は?

これぞさまざまな抗体クラスを持つ生物学的意味に直結しますが、IgMは補体を活性化する能力が特に高いが、胎盤を通過しないので、母親のIgM抗体を胎児に渡すことはできない。IgGは分子量がIgMより小さくて胎盤を通過できる。補体の活性化能は中程度。食細胞を活性化する。IgEは、肥満細胞や好塩基球などに特に高い親和性で結合し、細胞内の化学物質を放出させてアレルギー反応を惹起する活性が高い。IgAは、分泌鎖という別のポリペプチドも会合した二量体構造として粘液に分泌される。この分泌型IgAはプロテアーゼに対する耐性が特に強く、分解されにくい。ただし補体活性化能はなく、抗原に結合した後の生物活性には不明な点が多い。などなど。

 

予防接種には1回接種でよいものや2回異常の接種が必要なものがあるが、その違いは何に由来するのか?

免疫系を刺激する強さが、抗原によって(病原体によって)異なるので、刺激が弱いものは何度か繰り返して接種しないと十分な免疫記憶が成立しません。その分子レベルでの基盤には不明な点が多いのが現状です。

 

 

哺乳類のIgMは五量体なのに硬骨魚類のIgMは四量体であるのは、何に起因するのか?また、五量体と四量体の間に機能的な違いがあるか?

どちらの問いにも、はっきりとした答えはまだありません。重合度の意味に関しては、たくさん結合部位があった方が、正味の結合力が上昇してより強固に抗原に結合することができるようになるでしょう。

 

IgD以外にもまだ機能のわからない抗体分子があるか?

IgAも、抗原に結合した後の生物学的機能にはまだまだ不明な点があります。

 

二次応答ではIgMは増加しないのか?

哺乳類の場合、IgMよりもそれ以外のクラスの産生がより顕著に増強されます。IgMの産生がまったく増加しないわけではありませんが。

 

「ヨーグルトを食べると腸内で乳酸菌が増えて花粉症が治る」という現象(?)と、寄生虫を持っているとアレルギーになりにくいことの間には関係があるか?

どうなんでしょうね。両者には直接の関係は無いかもしれませんが、IgEへのクラススイッチを促進する体内環境やサイトカインバランス(後に授業で扱います。)を是正するような、共通の作用があるのかもしれません。

 

IgM(五量体)やIgA(二量体)が異なるモノマーから構成されることはあるか?

(少なくとも哺乳類では)天然状態では不可能です。1個のB細胞(抗体産生細胞)は、ゲノム中の片方の対立遺伝子にコードされた抗体分子しか産生しません。

 

抗原に対する一次応答の直後に抗原を再び投与したら、二次応答は正常な相当強度で起こるのか?

有意な一次応答があった後ならば、おそらく強い二次応答が得られるでしょう。一次応答が余りにも弱い場合には、二次応答も期待したほど強く早くないことがあります。(免疫が不十分)

 

抗原と抗体との結合は、どんな化学結合によるのか?

非共有的な相互作用です。(水素結合、ファンデルワールス力、疎水的相互作用、イオン結合など)どの結合がどんな割合で寄与しているかは、抗原/抗体によって様々であると考えられます。

 

サナダムシは平均でどれくらいの大きさか?

成虫で35 mだそうです。こちらを参照。

http://ja.pandapedia.com/wiki/サナダムシ 「サナダムシ」

http://homepage2.nifty.com/callon/    「目黒寄生虫館へ行こうよ!」

http://www8.plala.or.jp/mi/umiyama/sk/musi.html 「魚介類の寄生虫」

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