- レクチンの特異性において認識の違いが生じる意味は?
ちょっと質問の意味をとりにくかったのですが… 様々な構造の糖鎖を認識できる様々なレクチンは、結果としてそれだけ多様な微生物を認識することができて、自然免疫による生体防御に役立つ、と解釈されます。
- MBL/ficolinに結合するプロテアーゼはセリンプロテアーゼだけか? またその結合したセリンプロテアーゼの意味は補体の活性化だけか?
これらのレクチンに会合できるのは、MASPファミリーに属するセリンプロテアーゼだけです。ヒトでは、MASP1, MASP2, MASP3そしてsMAPです。
- MBL/ficolinのコラーゲン領域に、MASPやsMAPはどのように結合しているのか?
MASPのN末端側のドメインと、MBLなどのコラーゲン領域が、静電的に相互作用していることが解明されています。
X線結晶解析で得られた立体構造や、mutantの機能解析から、こまかい結合部位もほぼわかっています。詳しくはこちらの論文をどうぞ。
Teillet F, Gaboriaud C, Lacroix M, Martin L, Arlaud GJ, Thielens NM.
Crystal structure of the CUB1-EGF-CUB2 domain of human MASP-1/3 and identification of its interaction sites with mannan-binding lectin and ficolins.
J Biol Chem. 2008 Sep 12;283(37):25715-24
- 魚の血清からタンパク質を精製するのにどれくらいの期間がかかるのか?
それはタンパク質によって様々です。何段階もいろんなクロマトグラフィーをしないと純粋にならない場合は、当然のことながら長い期間がかかります。方法がわかっていても、数週間とか… 精製法自体を確立するような、研究の初期段階からの期間を合算すれば、1年以上に及ぶ場合もあるでしょう。タンパク質の精製自体が、場合によっては非常に高度なサイエンスを含みます。プラスミドやゲノムDNAの精製とはかなり状況が異なります。
- 魚類にのみ存在するレクチンがあるか?
今のところ見つかっていないと思います。
- Lily-typeレクチンの糖鎖結合部位はN-型かO-型か?
レクチンのリガンドとしての糖鎖の結合と、糖タンパク質糖鎖の付加の型を混同していますね。
- Fakelin (=Microfiblilar-associated protein 4 homologue)の生理的意義はどのように解釈されているのか?
まだほとんど何もわかっていません。が、ヒトの肺で発現し、肺胞で異物認識を担う別のレクチン(SP-A)と相互作用しているという報告があります。SP-Aを肺組織中に固定しているのかもしれません。ちなみにコイのFakelinは、ある種の微生物に結合します。直接Fakelinが異物認識を担って生体防御に関与している可能性があります!
Schlosser A, Thomsen T, Shipley JM, Hein PW, Brasch F, Tornøe I, Nielsen O, Skjødt K, Palaniyar N, Steinhilber W, McCormack FX, Holmskov U.
Microfibril-associated protein 4 binds to surfactant protein A (SP-A) and colocalizes with SP-A in the extracellular matrix of the lung.
Scand J Immunol. 2006 Aug;64(2):104-16.
- コイにはIgM意外の抗体クラスが存在するのか? あるとすればクラスの違いによってどんな機能的違いがあるのか?
IgDとIgTというクラスもあります。詳しくは、別の回の授業で紹介します。すごくおもしろい発見があります。予習したければ、こちら。
Flajnik MF.
The last flag unfurled? A new immunoglobulin isotype in fish expressed in early development.
Nat Immunol. 2005 Mar;6(3):229-30.
- フグ体表粘液中のlily-typeレクチンとユリ目植物に存在するレクチン間の遺伝的な関係性は? また両者が反応するバクテリアには共通性があるか?
全然わかりませんが、進化のある段階で、バクテリアかウイルスによって水平に遺伝子が伝播したのかも知れません。反応できるバクテリアの共通性については研究例がまだありません。
- Cタイプレクチンドメイン中のEPNモチーフとQPDモチーフは構造的に似ているのか?
似ています。が、荷電の位置がPを挟んでお互いに逆になるので、かなり違うとも言えます。C-typeレクチンの立体構造を探してみたら?
- レクチンの存在量と免疫力の強さに相関があるか?(たとえば魚類にはFCNがないから免疫力が弱い?)
個体レベルでの生体防御能の強弱と関連づけるにはまだデータが足りません。が、当然答えたい、重要な問いですね。
- なぜMBLは酵母を認識できないか?
酵母を認識できます。酵母表面のマンナンに結合します。
- コレクチンのCollagen-like domainは、かなりフレキシブルに動けるのか?
動けます。が、束ねられたレクチンドメインの糖鎖認識部位が全く逆の方向をてんでばらばらに向いてしまうほどには、緩くないようです。
- 両生類の体表粘液にもレクチンがある?
あります。試しにPubMedで”Xenopus lectin skin”をキーワードにして検索してみたら?
- MBL, FCN, MASPなどは体液や血液に恒常的に発現しているか? 微生物感染で発現量が上昇するか?
恒常的(構成的)に発現していますが、さらに微生物感染によって発現量が上昇します。
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