2009年10月6日火曜日

動物生化学091006フォローアップ

質問とコメントの少なさにややガッカリ。いくつかあった質問に答えます。また参考となるWeb pageも紹介します。

-思ったより楽しい授業でした。
どういう期待/心配をしていたか知りませんが、来週からは「思ったより楽しくない」かも。もちろん、いつも思ったよりためになる授業になるようにがんばります。

-メラミン混合はタチが悪いなぁ と思いました。
どんな点がタチが悪い、と思いましたか?

-多くの種類のタンパク質濃度測定法を使い分けるのは難しそうだと思いました。
ちょっと脅かしすぎたかも知れないけど、全く無頓着に使うのでなければ、きっとちゃんと選択できますよ。研究者の中にも、測定法の誤用はたまに見られます。それだけ簡単ではないけれど、意識していることと知らないことの差はとても大きいです。

-食品の成分分析において『粗』と表示されていない物はその方法で定量しているのですか?
ほとんどの場合タンパク質はケルダール法で測定されます。

-メラミン混入騒動の顛末
食品安全委員会の見解と解説
http://www.fsc.go.jp/emerg/melamine.html
世界保健機構(WHO)の見解へのリンクもあります。慌てず、恐れず、侮らず。正しい情報を参考に、冷静に対処しましょう。

2009年6月15日月曜日

水族生化学特論Q&A090609

補体古典経路の「古典」の意味は?
補体研究の過程で最も古く見つかった反応経路なので。

C3→C3a+C3bを触媒するMASP以外のプロテアーゼは?
無脊椎動物やヤツメウナギではMASPとBf(補体B因子)が触媒します。
有顎脊椎動物では、実はMASPの働きは弱くて、補体B因子かC2。
カブトガニではFactor Cという凝固系でも働くプロテアーゼがこの反応を触媒。
哺乳類では(試験管内では)トリプシンもこの反応を触媒しますが、生体内では起こらないでしょう(C3とトリプシンは局在が全く異なるので、ほとんど出会わない。)

補体活性化にネガティブなフィードバック制御は無いのか?
活性化を抑制するための成分も沢山含まれて、生体内での過剰な活性化を抑制する働きを担っていますが、ネガティブフィードバック(反応産物が直接抑制の引き金となるという意味)と呼べるほどのはっきりした反応・制御機構はわかってません。

様々な補体阻害剤はどの反応ステップを阻害するのか?
C1INH(serpinファミリーに属するプロテアーゼ阻害タンパク):C1を不活化
α2-macroglobulin: MASPを不活化
DAF、MCP、C4bp、CR1、factor H:C3を活性化するプロテアーゼ複合体を阻害
CD59:C9による膜侵襲複合体形成を阻害

「補体が過剰に活性化される」というのは具体的にはどんな現象か?
C3→C3a+C3bの反応が沢山進みすぎて、過剰に生じたC3bが標的のみならず、近隣の宿主(自己)細胞にも結合してしまう(糸球体腎炎などの原因)。同時にC3aや(さらに生じたC5a)が過剰に白血球を誘引・活性化して炎症を激化する(喘息発作などの増悪)
傷ついた細胞は補体を活性化してしまうような分子を表面に露出するので、自分に対して補体が働く。
などなど。

補体によって壊された臓器はどうなるのか?
最終的にはマクロファージによって貪食・除去されるでしょう。

α2マクログロブリンは、自分の(内因性の?)プロテアーゼも阻害するか?
します。このタンパクには自己・非自己を見分ける能力はありません。

ショウジョウバエ以外の昆虫でC3が存在するかどうかが調べられているか?
蚊の一種で調べられましたが、見つかりませんでした。

クラゲに刺された時の痛みは免疫系と関係があるか?
わかりません。密接な関係は無いと思います。ただし、クラゲとは関係ないかも知れませんが、我々の体内にはキニンという痛みを発するシグナルとなる物質があります。このキニンは炎症反応とも密接に関連しており、したがって免疫系の作用にも関係があるでしょう。(キーワード:ブラジキニン、カリクレイン)
http://homepage2.nifty.com/uoh/kiso/z_bradykinin.htm

免疫抑制剤の標的は何か?
主にリンパ球。その増殖を抑制する、活性化を抑制する、免疫反応に必要なサイトカインの作用を阻害する、などの作用がある。物質の例は、糖質コルチコイド(いわゆるステロイドホルモン)、シクロスポリンなど。

C3活性化の第二経路によるポジティブフィードバックを止める機構は?
C3b・Bb(C3活性化酵素)→C3b + Bbに解離させるタンパク質が血漿中や自己細胞上に発現している。
C3bを不活性なiC3bに分解するためのプロテアーゼ(I因子)とその補酵素(MCP、H因子など)が存在し、C3bBbの生成を抑制している。
などです。

C3を持つ動物と持たない動物の間で進化過程に違いがあるか?
わかりません。これからの研究課題です。

豚からの臓器移植における拒絶ではなぜMHC(主要組織適合性抗原)が関係しないのか?
移植片の拒絶に働くキラーT細胞は、疑わしい移植片のMHCに結合し、それが自己のMHCでなければ攻撃します。たとえばヒトとは異種のブタMHC日しては、それがMHCであることさえ認識できないので、キラーT細胞自身がそれをブタ臓器を異物であるとは認識できません。

溶解経路の反応機構をもっと知りたい。膜侵襲複合体(MAC)は五量体?
MACの組成は、C5b、C6, C7, C8までは1分子ずつでC9は4〜12量体と様々です。(動物種によっても違うし、同一種内でも幅があるらしい。)
総説
Walport MJ. Complement. First of two parts. N Engl J Med. 2001 Apr 5;344(14):1058-66.
Web
http://kusuri-jouhou.com/immunity/hotai.html
http://users.rcn.com/jkimball.ma.ultranet/BiologyPages/C/Complement.html
アニメーションによる解説
http://www.youtube.com/watch?v=vbWYz9XDtLw
http://www.youtube.com/watch?v=xcYSGRid50I&feature=related
http://www.youtube.com/watch?v=y2ep6j5kHUc&feature=related

何がきっかけとなって、脊椎動物の進化の過程でゲノムの倍加が2回も起こったのか?
きっかけや理由はわかりません。ゲノム全体の倍加は、通常は雑種化による四倍体化で起こります。(近縁の異種(2n)が交雑して、両種の染色体がそのまま残った状態。)

イソギンチャクの毒のようなMACPFドメインを含む毒素と補体系(の溶解経路?)を併せ持つ動物が存在するか?
イソギンチャクには補体の溶解経路は認められないので、いまのところは「存在しない」が答えですね。

BfのC3活性化以外の機能は?
わかっていません。C3以外の天然基質が見つかっていません。

C3と同様に、断片化されるにつれて生理活性が変移するタンパク質は他にはあるか?
広義に捉えれば、さまざまなプロテアーゼや活性ペプチドは不活性な前駆体から限定加水分解によって切り出されて活性化型に変化するので、断片化によって活性が変移していると言えますね。

Baitは疑似餌ではなく、釣りの(リアルな)餌です。
修正ありがとう。そうですね。ルアーが疑似餌ですね。

2009年6月10日水曜日

魚類免疫学Q&A090603

同じ抗原に対するB細胞でもIgMと作るものとIgGを作るものが同時期に存在するか? あるいはどのB細胞においてもクラススイッチが同時期に起こるのか?
ある程度オーバーラップします。全てのB細胞が一度にそろってクラススイッチしてしまうわけではないので。

すべての抗体は膜型と可溶型が存在するのか?
IgMとIgDのみ。

膜型と可溶型の機能の違いは?
抗原特異性に変わりはないが、たとえば膜型抗体は補体を活性化することはできないし、B細胞以外の細胞に認識されることもない。

魚にもアレルギーがあるか?
わかりませんが、細菌感染によって出血性の激しい炎症が起きる場合があるので、あれは一種のアレルギーでしょう。ただしIgEはないので、哺乳類で起きる「I型アレルギー」はないでしょう。(アレルギー反応の詳細は後の授業で触れるはず。)

クラススイッチが起こる条件・メリットは?
条件:つよい抗原刺激(たとえば感染状態)が続くこと。
メリット:抗体が働く部位・産生する部位に適した機能をもつような抗体のクラスを作ることができることがメリットと考えられます。

IgMよりもIgGが優れている点は?
大量に合成されて血中に放出されること。胎盤を通過できること。ある種のリンパ球やマクロファージを活性化して抗体依存性の細胞傷害反応(異物の細胞を殺すこと)を誘起できること、など。また、一般的にIgMよりも抗原に対する結合親和性が高い抗体に変化している場合が多い。

花粉症ではなかった人も、後天的に花粉症になることがあるが、なぜか?
おそらく、クラススイッチを制御する機構がだんだんと不全になって、IgEを作るようになってしまうからでしょう。(自分でも是非調べてみてください。)

サイトゾルとは?
細胞質内の、細胞内小器官以外の液体部分。
http://ja.wikipedia.org/wiki/細胞質基質

L鎖のLeader領域は何のために存在するのか?
L鎖を細胞外に分泌させるためのシグナルとして働く。

IgMのサイズは、IgE5個分くらいのサイズか?
サイズはおよそそれくらい。

スライド3のFig. 2の膜型抗体の左右にある膜蛋白質分子は何か?
詳しくは述べませんが、膜型抗体(別名BCR)には細胞内に活性化シグナルを伝達するための分子が会合しています(MB1、B29、非受容体型チロシンキナーゼなど)。それらが図の中に含まれていました。

抗体は自分自身で作ったものしか働かないか? 食べたら分解されるか? 注射したら?
他の個体から抗体をもらって働かせることができます。ヒトγグロブリン製剤はヒトの抗体を静脈内に点滴して、感染症を防ぐために使われます。また、ヘビ毒に対するウマ抗血清(抗体を含むウマ血清)は、ハブ、マムシ、コブラなどの毒ヘビに噛まれたときの救命用に注射されます。ただし、ウマ抗体はヒトにとって異物なので何度も打つことはできません。抗体を食べたら消化されますね。例外はIgA(プロテアーゼに抵抗性)。だから、IgAを含む母乳を飲むと、母親で成立していた免疫の恩恵を赤ちゃんが受けることになります。だから、乳児はそれほど感染症にならない。

硬骨魚類でIgM産生細胞がIgTを作れないことはわかったが、その逆はなぜ不可能なのか?
するどい質問!! まだわかっていません。

魚類免疫学Q&A090527

Igの語源は? IgA, IgM, IgG, IgE, IgDのA, M, G, E, Dの語源は? 哺乳類の5種類の抗体クラスの機能的な違いをまとめると?
Ig = immunoglobulin (免疫グロブリン)
D:全く不明。
M:巨大分子であることから(当初はmacroglobulinと呼ばれていた)。
G:血清タンパクの電気泳動における移動度からγ-globulinに分類されるため。
A:血清タンパクの電気泳動における移動度からβ2A-globulinと呼ばれていたため。
E:アレルギー性皮膚反応のErythema(紅班)を媒介することで発見されたので、そのEをとって。
*機能の違い
IgG:ヒト免疫グロブリンの70-75%を占め、血漿中に最も多い抗体である。血管内外に平均して分布する。補体活性化能を持つ。
IgM:ヒト免疫グロブリンの約10%を占める。通常血中のみに存在し、感染微生物に対して最初に産生され、初期免疫を司る免疫グロブリンである。補体活性化能が高い。
IgA:IgAはヒト免疫グロブリンの10-15%を占める。分泌型IgAは2つのIgAが結合した構造を持つ。IgA1は血清、鼻汁、唾液、母乳中に存在し、腸液にはIgA2が多く存在する。
IgD:ヒト免疫グロブリンの1%以下である。B細胞表面に存在し、抗体産生の誘導に関与するらしいが詳細は不明。
IgE:ヒト免疫グロブリンの0.001%以下と極微量しか存在しない。寄生虫に対する免疫反応に関与していると考えられるが、寄生虫の稀な先進国においては、特に気管支喘息やアレルギーに大きく関与している。


IgMなどの大きな抗体は最初からこの形に合成されるのか、それともIgGのような小さな単位がいくつか集合してできるのか?
分泌されるときにS-S結合がかかって五量体になります。

魚の抗体産生が環境水温で変動するということは、魚の抗体産生にとっての最適温度があり、その温度だと魚の寿命も延びるのか?
最適温度はあるでしょうが、寿命が延びるかどうかは不明。

ツベルクリンで結核に罹ったことがあるかを調べるということだが、気づかないうちに結核に罹っている、ということがあるのか?
あります。感染しても発病するとは限らないので。

授業が魚類免疫学なのに、魚の話しが出てこないのは少し残念。
今後もっと出てくるでしょう。

急な温度低下が抗体産生を阻害するとありましたが、逆に低い温度から高くするとどうなるのか?
なかなか渋い質問です。魚種によって異なるようですが、上昇であってもやはり急激な温度変化では抑制されるでしょう。(抗体産生を直接検査した報告は無いが、、、)

抗体がクラススイッチしないのは硬骨魚類だけなのか?
軟骨魚類もしません。

二次応答は一次応答に比べて何倍の抗体を産生できるか?
一概に何倍とは言えないです。ケースバイケース。

HV=CDRとは?
Hypervariable領域はcomplementarity-detemining regionと同じ意味です。

ハチに2回目に刺されるとショック死すると言われているが、これも抗原抗体反応によるのか? また、クラゲやウニに刺された場合も同じ事が言えるのか?
まさしくそうです。ただし、IgEが産生されて、その反応が強すぎてショックとなります。クラゲに刺されても起きる場合があります。
http://www.locopoint.net/danger/jfish.html
ウニに刺されたら? わかりませんが、ウニを食べてアレルギーでショックに陥る人がいるそうです。

B細胞が抗体産生細胞に分化する過程はどのようなものか?
「免疫学の基礎」第4版13章「B細胞の抗体産生細胞への分化とサイトカイン」を読んで勉強しよう! 簡単には、IL-4, IL-5, IL-6などのサイトカインの働きによって分化する。

免疫応答においてなぜIgMが最初に産生されるのか? 構造的にはもっとも複雑に見えるが、、、
V領域をコードするエキソンのもっとも近い下流にIgMのC領域をコードするエキソン群が位置するからです。

なぜ魚はクラススイッチを起こさないのか?
IgT、IgM、IgDの遺伝子しかないから。IgMとIgDは一緒に転写されて同時に発現します。IgTとIgMはリンパ球の成熟時にどちらかが選択されて、後にスイッチすることはないと考えられます。

哺乳類が持つ5種類の抗体クラスは、生物界でも多い方に属するか?
最も多いですね。

魚のIgTは実際に発現していないのに遺伝子配列だけからなぜ抗体であるとわかったのか?
Igに特有なアミノ酸配列のパターンがあるからです。(キーワードはIg superfamily)

2009年5月26日火曜日

水族生化学特論Q&A 090519

生体がいくつかの経路を用意していて異物によってそれらの経路を使い分けているのか?
基本的にはその通り。1:1の対応があるわけではない。

採血後のコイを食べるのか? あるいは他の実験に使う?
気が向くと食べます。洗い、こいこく(お味噌汁)。でも一度に沢山のコイ(30〜40尾)から採血すると、料理どころではない場合が多い。採血やお昼ご飯でこちらにお世話になってます。(広松養魚場)
http://www7.ocn.ne.jp/~hiromatu/

求愛遺伝子の変異がどのように求愛行動の異常を引き起こすのか?
記事を引用すると、
”2008年09月18日 雌への求愛などの性行動を活発にする遺伝子を発見
雄の求愛などの性行動 脳の“司令塔”を特定
 雌への求愛など、性行動を“男らしく”している脳細胞を、東北大大学院と北海道教育大の研究グループがショウジョウバエで特定した。約10万個の脳細胞のうち特定の場所に形成される20個ほどの「雄型細胞群」が雄の性行動の司令塔となっていた。11日付の米科学誌「ニューロン」に発表した。
 東北大大学院生命科学研究科の山元大輔教授らは、脳細胞のごく一部を雄型に性転換させた雌のキイロショウジョウバエを205匹作り、性行動を調べた。
 1匹ずつ正常な雌と“お見合い”させると、205匹中16匹が雄特有の求愛行動を起こした。性転換した脳の領域を調べると約20個の脳細胞がほぼ共通していた。他の細胞が「完全な雌」でも、この20個の雄型細胞群を組み込んだショウジョウバエは雄としてふるまった。
 これまでの研究で、ショウジョウバエの性決定にかかわる2つの遺伝子が分かっており、連携して雄型の神経回路と雌型の神経回路を作り分けているという。今回の成果で、脳細胞の生物学的な違いが行動の性差のもとになっていることが分かった。研究グループの北海道教育大の木村賢一教授は、「ショウジョウバエで見つかった脳細胞の性差は、ヒトの意識や行動に現れる男女差を解明し、客観的に理解するうえでも大きなヒントになるだろう」と話している。”
詳細は山元大輔教授の著作を探してみて下さい。

H1N1 Flu(=トンフルって言うんですか?)に罹った人はこのインフルエンザに対する免疫ができるのか?
当然できるでしょうね。実際に自然に感染してできた免疫は強くて長持ちでしょう。あ、鳥インフルは”トリフル”ってわけね。じゃあ、人々のインフルエンザということで”民フル”? 「あー寒い」

H1N1 Fluに罹ったら、これを認識する新しいレクチンができるか?
レクチンは創造されません。抗体やT細胞受容体などの獲得免疫による抗原レセプターを作るリンパ球クローンが体内で樹立されます。

様々なファミリーのレクチンが体表に分布した方が、病原体に認識スペクトルが広がって生残に有利に働くのか?
そのように考えられていますが、それを証明するのは簡単ではないですね。

レクチンの明確な定義は?
糖鎖結合タンパク質(ただし、抗体とグリコシダーゼを除く)
http://www.glycoforum.gr.jp/science/word/lectin/LEA00J.html

MBLの他の糖でのアセチル基への結合性は調べられているか?
GlcNAcとGalNAcだけです。

Lily型レクチンがフグに存在するのとは逆に、フグの遺伝子に似た遺伝子がユリのゲノムに持ち込まれているようなことはないか?
おもしろいですね。でも今のところ見つかっていません。

ある種のレクチンが補体を活性化することはわかったが、その補体の活性化が免疫にどのように関わるのか?
補体が活性化されると、微生物に対する食細胞の活性があがったり、炎症が起きたり、さまざまな反応が進みますが、詳細は別の回の授業で。

ではいったいficolinは何を認識しているのでしょう? アセチル基? β-1,3-グルカン?
わかりません。β-1,3-グルカン中に一部アセチル基が含まれているのか、その他の官能基がたまたまアセチル基と似た立体構造を取るようになるのか?

コイもゼブラフィッシュと並んでモデル動物としてよく使われるか?
細胞やタンパク質などを使った実験にはよく使われますが、ゲノムが大きいので(2n=100で全ゲノムサイズはヒトの約半分)ゲノムプロジェクトの対象にはなっていません。

メス決定遺伝子は存在するか?
動物によって性決定の仕組みはさまざまなので一概にはいえませんが、メス決定遺伝子というのを、私は聞いたことがありません。(知らないだけかも)こちらあたりをとっかかりにして調べてみたら?
http://www.biological-j.net/blog/2008/01/000376.html    そもそも性が遺伝的に決まらない生物もあります。

レクチン(MBLやficolin)が糖鎖に結合すると、それらに会合しているプロテアーゼ(MASP)がどのように活性化されるのか?
会合した分子全体の立体配座が変化し、その力によってMASPの前駆体が弱いながらもプロテアーゼ活性を示すようになり、近傍のMASPを活性化型に加水分解してから、その活性化型によって本格的に補体の活性化が進む(自己活性化)というシナリオが受け入れられています。

マンノース結合レクチンとガラクトース結合レクチンの存在は、陸上と水中など、生息環境の違いを反映しているのか?
そのように推察していますが、支持する実験データはまだありません。

魚類の他に、体表にレクチンを発現している動物はいるか?
単純な例ではナメクジやプラナリアなど。
http://www.j-tokkyo.com/2002/C07G/JP2002-356493.shtml

遺伝子の命名ルールは?
http://ja.wikipedia.org/wiki/遺伝子命名法

Fakelin研究のその後は?
地道に、どんな微生物に結合できるか?を調べます。(3−4種の細菌・酵母を試したが全く結合せず、、、、)

魚類免疫、特にレクチンの解明の今後の展開は?
特に、体表や消化管内での感染防御と免疫応答における役割りを解明し、魚類ワクチンの効果増強などに役立てる。

抗体による微生物の認識も糖鎖の認識によるのか?
糖鎖を認識する抗体もあります。

レクチンはグラム陰性菌と陽性菌の細胞壁構造の違いを見分けるか?
見分けるレクチンもあります。(ペプチドグリカンの細かい構造の違いによる。)

MBLやficolinのコラーゲン様ドメインは、コラーゲンとどのように似ているのか?
G-X-Yという繰り返しアミノ酸配列を含み、実際に三本鎖らせん構造をとっていること。

レクチンの糖鎖結合ドメイン一つと糖鎖の結合は弱い(親和性が低い)とのことだったが、その親和性自体を上げることが可能か?
劇的には上がらないでしょう。そもそも限られた数の水素結合か疎水的相互作用をするだけなので。

2009年5月20日水曜日

魚類免疫学Q&A090520

ほ乳類の赤血球に核がないのはなぜか?
こちらより引用。
なぜ赤血球は無核なのだろうか。これも進化的に説明できる。無核の赤血球は哺乳類の特徴である。温血動物で酸素運搬機能に特殊化した結果なのだ。哺乳類の赤血球は他の動物の血球に比べて小さいし、それ自身の代謝活性が低く、エネルギーをあまり消費しない。細い毛細血管を通して体のすみずみにまで、酸素を運ぶことが可能なのである。

ほかに、核がない分、体積に比較して表面積が広く、細胞内外の酸素の交換に有利、という説明もあります。

魚類のリンパ球による食作用は、好中球の食作用と同じように行われるのか?また、貪食した異物を分解し、マクロファージのように抗原を提示するのか?
基本的に同じ。貪食したら活性酸素も作って殺菌する。抗原提示するかどうかはまだ未解明。
参考文献:Li J, Barreda DR, Zhang YA, Boshra H, Gelman AE, Lapatra S, Tort L, Sunyer JO. B lymphocytes from early vertebrates have potent phagocytic and microbicidal abilities. Nat Immunol. 2006 Oct;7(10):1116-24.

リンパ球がビーズを貪食したことがフローサイトメトリーでわかるか?
わかります。フローサイトメトリーで、前方散乱光も側方散乱光も弱い「リンパ球」集団について、蛍光ビーズの蛍光強度を測定すれば良い。

ラテックスを細胞が取り込んだら、その細胞が死んでしまうことはないか?
好中球は死んでいくでしょうが、マクロファージやB細胞は死なないでしょう。今のところ、食べ過ぎて破裂して死んだ、という細胞を見たことはありません。

ほ乳類と魚類のそれぞれにおいて、リンパ球とマクロファージ間の関連がよくわからなかった。
ほ乳類では、(1)侵入してきた異物(菌)を好中球やマクロファージが貪食する。(2)マクロファージは、貪食して分解した異物由来の分子(主にペプチド)を細胞表面に戻して提示(=抗原提示)。(3)提示された抗原をリンパ球が認識して、その抗原に対する特異的な獲得免疫応答が始まる、という流れです。
魚類では、少なくとも(1)に(たぶん(2)にも)Bリンパ球も参加すると予想されています。

好中球やマクロファージは自らが産生した活性酸素でダメージを受けないのか?
鋭い質問です。特に好中球はこれがおこります。好中球自身のみならず、周りの宿主細胞にもダメージを与えることが知られています。マクロファージでは、おそらく活性酸素を消去する酵素の働きで、自らに激しい障害を与えることはないそうです。

フローサイトメトリーとFACSの違い?
Flow Cytometory=FACS=fluorescence activated cell sorting
FACScanはベクトン・ディキンソン社のこの解析装置の登録商標。
参照ページ:http://www.bc-cytometry.com/

好中球の寿命が短いのは何か理由があるのか?
<調査中>

なぜマクロファージがプラスチック製のビーズを異物として認識するのか?
鋭い質問。答えはわかりません。プラスチックを特異的に認識する受容体がある訳ではない。(ほかには、炭素粒子=墨汁の墨粒も貪食される)
こちらの解説には、
白血球はまた、ラテックスビーズな
ども貪食します。この場合には異物表面の電荷が問題になります。細胞表面のシアル酸は
負の電荷を帯びています。それゆえ、正の電荷を帯びたラテックスビーズなどは静電的に白
血球に結合し、これが貪食を誘導します。

とありますが、ラテックスビーズ=ポリスチレンビーズなので、ポリスチレンには電荷はないはず。
(ところで、単にラテックスといったら合成ゴムのことをさす。たとえばラテックス手袋とか。語源はこちら。)

顆粒球が多形核をもつ意味はなにか?
<調査中>

白血球は(プラスチック)ビーズを取り込んでも分解できない気がする(→その通り!)。分解できない物は白血球はどうしているのか?
そのまま細胞内(ファゴリソゾーム)にとどまるでしょう。魚類では、そんなマクロファージは徐々に体表に移動し、やがて体外に捨てられるそうです。

好中球とマクロファージの間の感染局所への集合速度の違いは、それらの構造上の違いに由来しているのか?
<調査中>

なぜ、魚類ではBリンパ球に食作用があるのか? 魚類にあってほ乳類にない理由は?
はっきりとはわかっていません。現在の仮説は、「Bリンパ球とマクロファージは、進化的には食作用を備えた共通の祖先細胞に由来し、魚類ではB細胞に分化しても、祖先の性質が色濃く残っている」というものです。魚類ほど強力ではありませんが、両生類のB細胞にも食作用活性が認められるそうです。

好酸球の駆虫活性とは?
こちらに解説があります。
蠕虫類の感染において、虫の排出する抗原が、T細胞(Th2)や肥満細胞を活性化させ、それらの細胞からインターロイキン4(IL-4)が作り出され、その結果、B細胞から抗体(IgE)が作り出されます。IgEは抗原とともに肥満細胞に脱顆粒を起こさせ、好酸球を虫の近くに集合させます。寄生虫の周囲で、好酸球は抗体や抗原の作用によって、脱顆粒を起こし、リソゾーム物質、主要塩基性蛋白、活性酸素を放出して、寄生虫を処理しようとします。これを抗体依存性細胞傷害作用(Antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity: ADCC) と言います。そのために、蠕虫感染の場合には、血液中のIgE が上昇し、また、好酸球数が増加します。


蛍光強度と細胞数の関係がわかると何に役立つのか?
たとえば、今回話した蛍光標識ビーズの貪食活性ならば、どれほどの貪食活性を示す細胞がどれくらいの割合で存在するかがわかり、その活性の高い細胞濃度によって、(たとえば魚の)病原菌に対する防御活性を推し量ることができます。

海水魚は海だけでしか生きられず、淡水魚は淡水でしか生きられないのはなぜか?
調べてみて。キーワードは「浸透圧調節」。ちなみに、海水・淡水どちらでも生活できる魚種もかなりあります。参考文献はこちら。

ピタゴラスイッチに出てくるような装置を(講義で)作りましょう。
ハハハ、、、、と受け流しときます。代わりにアルゴリズムマーチはいかが?


ピタゴラスイッチのメロディーが頭から離れません。
そんな君にはだめ押しにこちら。


こんなのもいかがか?

魚類免疫学Q&A 090422

卵を煮たり焼いたりしたらリゾチウムは失活するか?
100℃に加熱してしまえば、リゾチウムはほぼ完全に変性・失活してしまいます。pHや共存するタンパク質、イオン組成にも依存しますが、卵白リゾチウムは60℃〜70℃くらいまでは安定であると報告されています。(20分程度の保温時間として)

卵を食べると、卵白に含まれているリゾチウムによって免疫力が上がるか?
変性してしまうほど加熱されていなければ、いくらかの抗菌効果は期待できるでしょうね。

バクテリアに似たアセチル基の分布をもつ分子がカブトガニなどの宿主には全く存在しないのか? 高密度のアセチル基の存在は微生物に特異的なのか?
アセチル基が高密度に規則正しい間隔で並ぶ、という空間配置は、およそバクテリアの細胞壁などの微生物由来と考えられます。
全ての微生物由来分子構造が、微生物に特異的である、とは言えません。私の経験では、コイの血清中には、免疫して無くてもウサギ赤血球に結合する抗体がしばしば含まれますが、コイがウサギ赤血球に出会うチャンスは天然では無いと考えられます。これは、ウサギ赤血球表面に存在するなんらかの(おそらく糖鎖構造)分子と似た分子を持つ微生物を、コイの免疫系が過去に認識したことがあるからだろうと考えられます。

実験中に、たとえばリゾチウムのコンタミなどの自己を防ぐような工夫をしないのか?
もちろん現在ではそんな汚染を防止する対策をしています。基本的には、手袋をする、マスクをするなどの注意の他に、汚染すると困るものを同じ実験台で使わないなど、様々な対策が考えられます。もしRNAを分離する機会があれば、このような汚染に対する注意が以下に重要であるかを体験するでしょう。

α2マクログロブリン(A2M)によるプロテアーゼ阻害機構は? また、A2Mは生体内のプロテアーゼには作用しないのか?
A2Mは、まずプロテアーゼに自分の一部の構造(特定の部位のペプチド結合)を切断させ、それによって自らがそのプロテアーゼを閉じこめるような立体構造変化を起こします。標的であるプロテアーゼに切断される部位を「Bait-region」と呼びます。
A2Mは、微生物などに由来する外来のプロテアーゼばかりでなく、内因性の(自分の生体内で合成した)プロテアーゼも阻害します。むしろプロテアーゼの種類を選ばない、と言えます。生体防御や凝固系で働くいくつかのプロテアーゼを阻害できることが判明しており、その阻害が各種生理機能の制御に重要であると考えられています。

チキンタイプと比較してグース型リゾチウムの利点は何か?
特にメリットといえる点は知られていません。

レクチンなどによって凝集された微生物が凝集したまま動き回ることはないのか?
そのような現象が観察されて例はありません。

抗菌ペプチドが体内で賛成されるものならば、長い歴史の間にそれに対抗できる(耐性)菌が生まれてもよいのではないか?
そうかもしれませんが、証拠はありません。でも、この質問(疑問)はとても重要です。もし耐性菌ができていないとすれば、なぜできなかったのかは重要です。

マンノース結合レクチンとコングルチニンの立体構造の違いに関連して、四量体と六量体という構造の違いによってなぜ機能に違いが生じるのか?
Good Question! 私たちは、糖鎖認識部位の向きによって機能が違うと理解していますが、完全な証拠に裏付けられているわけではありません。

新しく見つかった因子が何に結合するのかはどうやって調べるのか?
すごくスルドイ質問です。何か心当たりの成分(分子)があれば結合性を調べられます。方法のキーワードはたとえばBIACOREとか表面プラズモン共鳴、Quartz Crystal Microbalanceなどがありますが。相互作用する物質に心当たりがなければ、もっと網羅的に(=片っ端から)結合相手を探します。(インタラクトーム解析)。その方法にもいろいろありますが、調べるキーワードは、たとえば、ツーハイブリッド(Two hydrid)。

体内で働く抗菌ペプチドを、体外で抗生物質代わりに使うことがなぜ危険なのか?
体内では、抗菌ペプチドだけでなく他の免疫系も働いて菌が排除される(殺される)。菌と抗菌ペプチドの接触時間も短く、耐性菌が生じるチャンスがほとんどない。体外で使うと、加えた抗菌ペプチドと菌が長く、突然変異などで耐性菌が生じる機会が比較的増えるから。

親水性残基として酸性や非極性親水性のアミノ酸をもった抗菌ペプチドはないのか?
抗菌ペプチドは何故バクテリアを認識できるのか?
今のところは、そのような抗菌ペプチドは見つかっていません。少なくとも、抗菌ペプチドは塩基性から中性での荷電基を持つ両親媒性のペプチドであり、この性質は、作用すべき微生物の細胞膜表面の方が、宿主よりもマイナス荷電を多く持つこととよく一致します。なお、バクテリアが生産する抗菌ペプチド(バクテリオシン)は、多細胞動物が作る抗菌ペプチドとは異なる化学的性質と作用機構をもつようです。
バクテリオシン参考web
http://www.microbes.jp/dic/Content/ha013.html
http://www.agr.kyushu-u.ac.jp/biosci-biotech/biseibutu/theme-bacteriocin.html
http://www.agr.kyushu-u.ac.jp/biosci-biotech/biseibutu/theme-nukacin.html


知らない単語が多くてその説明が書かれていないので、初出の単語の説明をなるべくして欲しい。
できるだけそのように務めます。後日詳しく説明する語句をとりあえず紹介しなければならない場合もあるんですけど。

CタイプレクチンはなぜCaイオンを必要とするのか?
分子内にCaイオンと結合する部位があり、ここにCaイオンが配位することで正常な機能を果たす立体構造を保つことができるためです。通常、体液中には2-3 mMのCaイオンが含まれていますが、これはCタイプレクチンのようなCa要求性のタンパク質にとっては十分な濃度です。

今日(4/22)習った免疫系は全て人体にあるのか?
あります。抗菌ペプチドの細かい種類などには違いがあるけれど。

Type Iインターフェロンが活性化するNK細胞とはどんな細胞か?
NK=natural killer細胞は、免疫刺激が無くとも、もともとガン細胞やウイルス感染細胞などを殺す能力を備えたリンパ球の一種。

動物リゾチウム以外にも動物の免疫因子が人間の生活に役立っている例はあるか?
たとえば、さまざまな動物にある抗菌ペプチドを、抗菌性の医薬や食品保蔵に使おうという試みはあります。
(特許の例)http://jstore.jst.go.jp/cgi-bin/patent/advanced/detail.cgi?pat_id=7642
また、マウスの細胞を使って作成するモノクローナル抗体は、医薬や試薬として広く利用されています。

授業の最初と最後にもっとマクロなレベルでの各キーワードの関係を示して欲しい。
全体の流れをつかみたい、ということね。工夫してみます。が、自ら質問することによっても、情報を補って下さい。

HIV感染者は口中にカビが生えてしまうと聞いたことがあるが、唾液に含まれるリゾチウムやレクチンがなくなって免疫不全に陥るのか?
人の場合、AIDS患者の口腔内でCandida感染を防げなくなることがあるそうですが、これはヒスタチンという抗菌ペプチドの濃度が低くなっていることと関係があると言われています。なぜヒスタチンレベルが減るのかは不明(私が知らないという意味)。

現在、抗菌ペプチドに耐性を示す菌が確認されているか? 
天然ではまだのようですね。実験室内で人為的に誘導された耐性菌株はあります。一方、バクテリアが作る抗菌ペプチド(バクテリオシン)に対する耐性菌は存在します。
http://www.ipc.shimane-u.ac.jp/human_life/aso/project2.htm

抗菌ペプチドの耐性菌の耐性獲得メカニズムは?
作用機構があまり分かっていないので、耐性獲得機構もよく分かっていません。今後重要な研究テーマです。参考Web
http://www.kit.hi-ho.ne.jp/sa-to/joetutrial-08.htm