100℃に加熱してしまえば、リゾチウムはほぼ完全に変性・失活してしまいます。pHや共存するタンパク質、イオン組成にも依存しますが、卵白リゾチウムは60℃〜70℃くらいまでは安定であると報告されています。(20分程度の保温時間として)
卵を食べると、卵白に含まれているリゾチウムによって免疫力が上がるか?
変性してしまうほど加熱されていなければ、いくらかの抗菌効果は期待できるでしょうね。
バクテリアに似たアセチル基の分布をもつ分子がカブトガニなどの宿主には全く存在しないのか? 高密度のアセチル基の存在は微生物に特異的なのか?
アセチル基が高密度に規則正しい間隔で並ぶ、という空間配置は、およそバクテリアの細胞壁などの微生物由来と考えられます。
全ての微生物由来分子構造が、微生物に特異的である、とは言えません。私の経験では、コイの血清中には、免疫して無くてもウサギ赤血球に結合する抗体がしばしば含まれますが、コイがウサギ赤血球に出会うチャンスは天然では無いと考えられます。これは、ウサギ赤血球表面に存在するなんらかの(おそらく糖鎖構造)分子と似た分子を持つ微生物を、コイの免疫系が過去に認識したことがあるからだろうと考えられます。
実験中に、たとえばリゾチウムのコンタミなどの自己を防ぐような工夫をしないのか?
もちろん現在ではそんな汚染を防止する対策をしています。基本的には、手袋をする、マスクをするなどの注意の他に、汚染すると困るものを同じ実験台で使わないなど、様々な対策が考えられます。もしRNAを分離する機会があれば、このような汚染に対する注意が以下に重要であるかを体験するでしょう。
α2マクログロブリン(A2M)によるプロテアーゼ阻害機構は? また、A2Mは生体内のプロテアーゼには作用しないのか?
A2Mは、まずプロテアーゼに自分の一部の構造(特定の部位のペプチド結合)を切断させ、それによって自らがそのプロテアーゼを閉じこめるような立体構造変化を起こします。標的であるプロテアーゼに切断される部位を「Bait-region」と呼びます。
A2Mは、微生物などに由来する外来のプロテアーゼばかりでなく、内因性の(自分の生体内で合成した)プロテアーゼも阻害します。むしろプロテアーゼの種類を選ばない、と言えます。生体防御や凝固系で働くいくつかのプロテアーゼを阻害できることが判明しており、その阻害が各種生理機能の制御に重要であると考えられています。
チキンタイプと比較してグース型リゾチウムの利点は何か?
特にメリットといえる点は知られていません。
レクチンなどによって凝集された微生物が凝集したまま動き回ることはないのか?
そのような現象が観察されて例はありません。
抗菌ペプチドが体内で賛成されるものならば、長い歴史の間にそれに対抗できる(耐性)菌が生まれてもよいのではないか?
そうかもしれませんが、証拠はありません。でも、この質問(疑問)はとても重要です。もし耐性菌ができていないとすれば、なぜできなかったのかは重要です。
マンノース結合レクチンとコングルチニンの立体構造の違いに関連して、四量体と六量体という構造の違いによってなぜ機能に違いが生じるのか?
Good Question! 私たちは、糖鎖認識部位の向きによって機能が違うと理解していますが、完全な証拠に裏付けられているわけではありません。
新しく見つかった因子が何に結合するのかはどうやって調べるのか?
すごくスルドイ質問です。何か心当たりの成分(分子)があれば結合性を調べられます。方法のキーワードはたとえばBIACOREとか表面プラズモン共鳴、Quartz Crystal Microbalanceなどがありますが。相互作用する物質に心当たりがなければ、もっと網羅的に(=片っ端から)結合相手を探します。(インタラクトーム解析)。その方法にもいろいろありますが、調べるキーワードは、たとえば、ツーハイブリッド(Two hydrid)。
体内で働く抗菌ペプチドを、体外で抗生物質代わりに使うことがなぜ危険なのか?
体内では、抗菌ペプチドだけでなく他の免疫系も働いて菌が排除される(殺される)。菌と抗菌ペプチドの接触時間も短く、耐性菌が生じるチャンスがほとんどない。体外で使うと、加えた抗菌ペプチドと菌が長く、突然変異などで耐性菌が生じる機会が比較的増えるから。
親水性残基として酸性や非極性親水性のアミノ酸をもった抗菌ペプチドはないのか?
抗菌ペプチドは何故バクテリアを認識できるのか?
今のところは、そのような抗菌ペプチドは見つかっていません。少なくとも、抗菌ペプチドは塩基性から中性での荷電基を持つ両親媒性のペプチドであり、この性質は、作用すべき微生物の細胞膜表面の方が、宿主よりもマイナス荷電を多く持つこととよく一致します。なお、バクテリアが生産する抗菌ペプチド(バクテリオシン)は、多細胞動物が作る抗菌ペプチドとは異なる化学的性質と作用機構をもつようです。
バクテリオシン参考web
http://www.microbes.jp/dic/Content/ha013.html
http://www.agr.kyushu-u.ac.jp/biosci-biotech/biseibutu/theme-bacteriocin.html
http://www.agr.kyushu-u.ac.jp/biosci-biotech/biseibutu/theme-nukacin.html
知らない単語が多くてその説明が書かれていないので、初出の単語の説明をなるべくして欲しい。
できるだけそのように務めます。後日詳しく説明する語句をとりあえず紹介しなければならない場合もあるんですけど。
CタイプレクチンはなぜCaイオンを必要とするのか?
分子内にCaイオンと結合する部位があり、ここにCaイオンが配位することで正常な機能を果たす立体構造を保つことができるためです。通常、体液中には2-3 mMのCaイオンが含まれていますが、これはCタイプレクチンのようなCa要求性のタンパク質にとっては十分な濃度です。
今日(4/22)習った免疫系は全て人体にあるのか?
あります。抗菌ペプチドの細かい種類などには違いがあるけれど。
Type Iインターフェロンが活性化するNK細胞とはどんな細胞か?
NK=natural killer細胞は、免疫刺激が無くとも、もともとガン細胞やウイルス感染細胞などを殺す能力を備えたリンパ球の一種。
動物リゾチウム以外にも動物の免疫因子が人間の生活に役立っている例はあるか?
たとえば、さまざまな動物にある抗菌ペプチドを、抗菌性の医薬や食品保蔵に使おうという試みはあります。
(特許の例)http://jstore.jst.go.jp/cgi-bin/patent/advanced/detail.cgi?pat_id=7642
また、マウスの細胞を使って作成するモノクローナル抗体は、医薬や試薬として広く利用されています。
授業の最初と最後にもっとマクロなレベルでの各キーワードの関係を示して欲しい。
全体の流れをつかみたい、ということね。工夫してみます。が、自ら質問することによっても、情報を補って下さい。
HIV感染者は口中にカビが生えてしまうと聞いたことがあるが、唾液に含まれるリゾチウムやレクチンがなくなって免疫不全に陥るのか?
人の場合、AIDS患者の口腔内でCandida感染を防げなくなることがあるそうですが、これはヒスタチンという抗菌ペプチドの濃度が低くなっていることと関係があると言われています。なぜヒスタチンレベルが減るのかは不明(私が知らないという意味)。
現在、抗菌ペプチドに耐性を示す菌が確認されているか?
天然ではまだのようですね。実験室内で人為的に誘導された耐性菌株はあります。一方、バクテリアが作る抗菌ペプチド(バクテリオシン)に対する耐性菌は存在します。
http://www.ipc.shimane-u.ac.jp/human_life/aso/project2.htm
抗菌ペプチドの耐性菌の耐性獲得メカニズムは?
作用機構があまり分かっていないので、耐性獲得機構もよく分かっていません。今後重要な研究テーマです。参考Web
http://www.kit.hi-ho.ne.jp/sa-to/joetutrial-08.htm
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