2011年6月1日水曜日

魚類免疫学 Q&A 110518

※講義資料はこちらのサーバーからダウンロードできます。

Q IgGとIgDのドメイン数は同じだが、どこが異なるのか?
A 基本的なIgらしいアミノ酸配列を保持し、Igドメインの数も同じですが、互いに30%以下のアミノ酸配列同一性しか示しません。

Q IgMやIgAがオリゴマーになる理由は何か?
A IgMは、H鎖のCH4ドメインンのC末端付近にあるCysが鎖間でジスルフィド結合を形成して五量体(哺乳類)となります。IgAは、J-chainと呼ばれる分子量約15 kDaのポリペプチドに2分子のIgA H鎖がジスルフィド結合することによって二量体化します。五量体IgMにもJ-chainが含まれますが、五量体化にはJ-chainは必須ではありません。

Q 抗原と抗体が大きな凝集物を作ったら、その塊は生命現象を阻害したりしないか?
A 大きさによるでしょう。過剰な免疫複合体は、組織に沈着しやすく、自己免疫疾患やアレルギーの原因になることがあります。(例:糸球体腎炎など)

Q 抗体のクラスによる化学的性質の違いは?
A 等電点、分子量などが異なりますが、純粋に化学的な性質と言うよりも、生物学的な性質(生体内での機能)の違いが重要です。

Q 魚類で最も多く作られるIgMの方がIgDよりも複雑な構造をもつのは何故か(大量に必要なものは簡単な構造になるように進化しなかったのはなぜか)?
A IgMとIgDは両方とも進化的には祖先に近い抗体です。高等動物では、IgDのように分子量の小さなクラス(IgGやIgA)が量的に沢山作られますので、「大量に必要なものは簡単な構造になるように」変化したと言えるでしょう。

Q ラクダの抗体にはH鎖しかないために不利な点はないか?
A ラクダの生存にとってなんら不都合はないようです。

Q 抗体産生において環境温度の影響を受けるのは硬骨魚類だけか?
A 変温動物には同様な傾向があるでしょう。

Q ヤツメウナギ(円口類)は抗体をもたないのにどうやって抗原(微生物)から身を守っているのか?
A 自然免疫因子と、円口類特有の抗体様分子が働いていると考えられます。興味がある人は、「Variable lymphocyte receptor」で検索してみて。

Q B細胞の分化の詳細を知りたい。
A 参考資料をどうぞ。
http://lifesciencedb.jp/dbsearch/Literature/get_pne_cgpdf.php?year=1998&number=4302&file=DXEWJQweka1Om1vrWQpSXQ==

Q 魚類は水中にいるの、空気中で生活する人間と同じタイプの免疫を持っていてそれが正常に働くのだろうか?
A 必ずしも同じタイプの免疫とは言えないでしょう。似た分子を使ってはいますが。

Q (抗体の)ドメインの大きさは一定か?
A 一つのIgドメインはおよそ100アミノ酸で、分子量12〜13 kDa。

魚類免疫学 Q&A 110511


Q マクロファージによる抗原提示のメカニズムを詳しく知りたい。
A 抗原提示のメカニズムはこの授業の後半で説明します。(杣本先生担当)お楽しみに。キーワードは、外因性抗原の提示、MHCクラスII、CD4、ヘルパーT細胞。

Q マクロファージは自身が作った殺菌物質から自分をどのように防御しているのか?
A 抗菌ペプチド、リゾチームなどは細菌に対してのみ働く特異性があります。各種消化酵素はファゴリソゾーム内に閉じ込められています。活性酸素、活性窒素は自身に非特異的に作用する可能性があるので、Superoxide dismutase、カタラーゼや各種抗酸化物質を産生して消去しています。

Q ニジマスリンパ球の貪食写真は偶然撮れたのか?
A 撮影した本人(オリオール・スニエル博士 写真右端)に尋ねました。1日8時間!以上、そして1週間以上をかけて電子顕微鏡による観察を続け、もっとも効果的な写真を撮影することに成功しました。そんな粘りと集中力が重要でした。


Q 貪食細胞は自分より大きな異物に対してはどのような反応をするのか?
A 異物をいくつかの食細胞で取り囲む包囲化を起こしたり、標的細胞に接着して活性酸素を浴びせて細胞障害作用を及ぼします。

Q 魚類の食細胞とヒトの食細胞ではどちらが優れているのか?
A 種による優劣を語ることはできません。例えば、アユの好中球は非常に高い活性酸素産生能を示しますが、それが優れた性質なのかどうかはわかりません。

Q 哺乳類の赤血球はなぜ無核になったのか?
A 答えの一説はこちら。
http://h-ninomiya.at.webry.info/200904/article_2.html

Q なぜ魚類や甲殻類の細胞株を樹立することが難しいのか?
A わかりません。

Q エビ・カニの組織内には細菌が存在していても問題ないのか?
A 細菌の性質(種)や濃度にもよるでしょうが、現実に細菌がいますから問題ないのでしょうね。ただし、カブトガニの血球のようにグラム陰性菌に非常に鋭敏に反応する例もあります。

Q 魚類や甲殻類の食細胞をうまく保存する手法を見つけたらスゴイですか?
A まじ、すごいです。

2011年5月11日水曜日

魚類免疫学QA 110427

この回の講義資料などのダウンロードはこちらから
https://storage.iii.kyushu-u.ac.jp/public/8gpkQA4JOoNAPVgBRxUv1AKRFtiCxZG1kioUdxTYl8sM

Q コレクチン(MBL)は糖鎖のどの部分を認識するのか?
A 糖鎖を構成する単糖の3位と4位の炭素に付く水酸基を認識しています。これら3,4位の水酸基の相対的な向きがマンノースとグルコース(グルコサミンも)間で同じなので、MBLは通常、マンノースもGlcNAcも認識できます。

Q 補体にCaイオン、Mgイオンが必要な理由は?
A C1という成分はC1q、C1r、C1sという3種のタンパク質が会合して作られていますが、この会合にCaイオンが必要です。また、補体成分C2とB因子は、分子内にMgイオンを結合しないと機能しません。

Q 古典経路という名称は、補体1900年頃に発見された時も古典経路と呼ばれていたのか?
A 古典経路という名前は、第2経路が発見された時に名付けられました。

Q C5〜C9の作用を分子レベルでもう少し詳しく知りたい。補体C1, C4, C2の機能も詳しく知りたい。
A オススメ参考書を紹介しましょう。
「補体への招待」(大井、木下、松下編 メジカルビュー社)(中央図書館に1冊有ります。)
または、膜侵襲複合体形成についてはこちらにも参考になりそうな記事をおきます。
https://storage.iii.kyushu-u.ac.jp/public/JgdgQAWJUwNAOr8BbBYvl9PaW1Uil4HjTLLqPGQxbcby

Q C3aは一本鎖構造?
A 一本鎖です。C3a内にCysが6個ありますが、すべて鎖内でジスルフィド結合しています。

Q 補体を持っていない動物(たとえばハエやエビ?)は、補体の代わりになる生体防御因子を備えているのか?
A 鋭い質問です。殺菌活性で言えば、多くの抗菌タンパクがあります。オプソニン活性を示すレクチンもあります。これらが完全に補体の代用になっているかどうか?に答えるのは難しいです。

Q なぜサンダーバードが好き?
A 決まってるでしょう!かっこいいから。特に、1号から3号が発射する仕組みがCool!
http://www.tbjapan.com/

Q 自己免疫疾患になると体はどうなるのか?
A 本来は外的を殺すべき免疫因子によって、自分の細胞が障害を受けます。

Q 白血球が異物を取り込んでいる写真があったが、実際に何倍くらいに拡大すると見えるのか?
A 光学顕微鏡ならば200〜400倍で見えます。

Q チオエステルはC3が異物と出会えば自動的に切断されるのか?
A C3がC3aとC3bに分解されて、C3bが大きな立体構造変化を起こすと切断されます。人為的には、低分子アミンと反応させると、切断できます。

Q なぜ補体による異物認識(活性化経路?)が3種類有るのか?
A なぜでしょうねぇ? それぞれの経路が認識できる標的分子が異なるので、いろんな病原体に対して反応できるように仕組まれているのでしょう。異物認識のレパートリーを広げる意味がある、と表現しましょう。

Q 赤血球の大きさは大人と子供では異なるか?
A 調べてみて。少し調べた限りでは、おそらく有意な差は無いと思います。それよりも、生理状態(貧血など)によってサイズは有意に変化します。

Q 携帯のストラップは何かのキャラ?
A さぁ? 家族からのもらい物ですのでわかりません。


2011年4月26日火曜日

魚類免疫学 110420 Q&A


*Q&Aおよび授業資料のpdfファイルはこちらからダウンロードできます(授業があった日からふつうは1週間以内にアップします。サーバーにアップしてから2週間はダウンロードできます。)

Q コラーゲンを食べて分解・消化・吸収されたアミノ酸は、コラーゲン生合成の材料として使われやすいか?
A まずはWikipediaでも足がかりに調べてみたらいかがですか?
http://ja.wikipedia.org/wiki/コラーゲン
簡単に表現すれば、
・摂取したコラーゲン中のヒドロキシプロリンやヒドロキシリジンは、コラーゲンの生合成には使われない。
・上記アミノ酸を形成するためのヒドロキシル化にはビタミンCが必須。
・直接生合成の材料にはならないが、コラーゲン由来ペプチドがコラーゲン合成を促進させるような間接的な効果は報告されている。

Q コラーゲンはどのように摂取すれば効果があるのか?
A 「どんな」効果を得たいのかわかりませんが… 

Q コラーゲンを飲んでも意味がないのにそんな商品が発売されているのは何故か? 意味がないと考えるのは(中尾の)個人的意見?
A 効果があると感じ、信じている人がいるから売れるのでしょう。上記のような間接的効果があることを否定しませんが、現在のようなコストを払ってありがたがる意味はないと思います。これは私の個人的意見です。普通のタンパク質と必要十分なビタミンCを摂取していれば、必要な量のコラーゲンは合成されるものでしょう。ことさらコラーゲンをありがたがる必要はないのでは? さらに言えば、ゼラチンはコラーゲンの熱変性物です。経口摂取するんだったらどちらでも同じですよね。

Q コレクチンのコラーゲン様領域は、アミノ酸配列がコラーゲンに似ているのか、三本鎖構造をとる点が似ているのか?
A G-X-Yが繰り返すアミノ酸配列のタンパク質は、正常に存在するには必然的に三本鎖構造らせん構造をとります。したがって、両方の点で類似していることになります。

Q コラーゲンのアミノ酸配列-G-X-Y-のXとYにはどんなアミノ酸が入るのか?どんなアミノ酸がヒドロキシ化を受けているのか?
A ヒドロキシル化されるアミノ酸はLysineとProline。そのほかどんなアミノ酸があるかは、
http://www.genome.jp/dbget-bin/www_bfind?swissprot
で、collagenを検索してみましょう。

Q 抗菌ペプチド耐性菌によって免疫が効かなくなることとエイズウイルスとの関連はありますか?
A ありません。自分の抗菌ペプチドが無効になることと、HIV(エイズウイルス)で自分が免疫不全状態になることはまったく異なります。

Q もっと脱線話しを。
A 期待されなくとも、話さずにはおられますまい。

Q レクチンによる異物排除の仕組みがわかりにくかった。
A 凝集反応、オプソニン化、補体の活性化などに関する今後の授業で触れ直すことにします。

Q チキン型とグース型リゾチームの由来は?
A ニワトリ卵白から最初に見つかったのがチキン型。グース型の命名も同様な理由だと想像しますが、証拠は見つかりませんでした。google検索でいろいろ探してみたら?

Q 抗菌ペプチドは細胞壁(ペプチドグリカン層)や外膜を透過して細菌の細胞膜に到達できる?
A 分子量が小さいので、細胞壁や外膜を通過できます。

Q 魚は卵白リゾチームを食べてくれる?
A 配合飼料に練り込めばOKです。

Q グラム陽性菌と陰性菌(の細胞壁?)に物理的な強さの違いがあるか? 両細菌の利点と欠点は?
A 細胞壁の物理的強度に関しては気にしたこともありませんでした。わかりません。「利点と欠点}という考え方は馴染まない気がします。

Q グラム陽性・陰性菌ではどちらの方が(種の?)数が多いか?
A 微生物学/細菌学の教科書を参照して下さい。ところで細菌学には、オンラインの教科書もあるんですね。
http://www.textbookofbacteriology.net/index.html

Q カブトガニタキレクチン5の5カ所のアセチル基結合部位のうち、プリントの図にあるように4カ所で結合しただけでは正味の結合力としては強くないのか?(5カ所全てが結合しないとダメ?)
A 正味の結合力の強い/弱いにはっきりした境界があるわけではく、結合力は実際にリガンドが結合している数に比例するでしょう。

Q グース型リゾチウムはキチン分解活性が弱いのに、なぜ進化的に保存されているのか?
A 興味深い、大事な視点だと思います。キチンは分解できずとも抗菌作用はあって、それに生体防御上の意味があるのでしょう。総説を紹介します。
Lysozymes in the animal kingdom.
Callewaert L, Michiels CW.
J Biosci. 2010 Mar;35(1):127-60. Review.
ホヤの一種(Ciona intestinalis)には、グース型しか見つからないのだそうです。
Urochordates carry multiple genes for goose-type lysozyme and no genes for chicken- or invertebrate-type lysozymes.
Nilsen IW, Myrnes B, Edvardsen RB, Chourrout D.
Cell Mol Life Sci. 2003 Oct;60(10):2210-8

2011年4月19日火曜日

魚類免疫学 110413 Q&A


Q ”予期している”の意味がよくわからない。
A これから自然免疫のメカニズムを説明しながら、この点に関しても理解できるように工夫したいと思います。

Q 両親にはない、卵・そばアレルギーがあるのは獲得免疫に関係するのか?
A はい、獲得免疫が関係します。遺伝と無関係ではないですが、100%遺伝するわけではありません。

Q 水産用医薬品にも様々なものがあるようだが、それらはどんなときに使われるか?
A この授業のかなり後の方で杣本先生から講義があります。

Q 魚類の免疫研究で一番注目されている魚類(魚種)は何か?
A 1種ではないです。モデル生物としては、ゼブラフィッシュ、メダカ、トラフグなどの研究者人口が多いです。産業場の重要種としては(流行り廃りがあるが)、日本ではヒラメ、欧米ではニジマスが人気です。私の研究室が対象とするコイとギンブナは、ゼブラフィッシュの親戚で、世界レベルでの産業的重要性とモデル魚としての優れた性質を兼ね備えています。

Q 魚に投与された免疫強化剤を、魚ごと人間が摂取すると何か影響がないか?
普通の(天然物の)免疫強化剤は主に多糖かタンパク質なので、少量を経口で摂取することには問題ないと考えられますが、すべての免疫強化剤は経口摂取における安全性を確かめてから認可されます。

Q 獲得免疫に置いて、親子で異なる細胞をもるようになるのはどの時点からか?
リンパ球の元になる幹細胞が骨髄で作られてから、抗体やT細胞受容体という分子の遺伝子が変化します。個体の年齢に応じてと言うよりは、リンパ球が造血されてから成熟して行くにしたがって遺伝子が変化します。

Q 自然免疫では何がどうやって異物に働くのか?
A それはそれはいろんな分子がありますので、これからの授業で順に説明します。
例)レクチン、抗菌ペプチド、補体、リゾチームなどなど

Q IgGとIgEって何?
A 抗体あるいはイムノグロブリンと呼ばれるタンパク質には様々な種類(様々なクラスがある、と表現)があります。GとかEとかはそのクラスの違いです。詳細は追々講義します。

Q 獲得免疫は有顎脊椎動物にしかないそうだが、獲得免疫機構と顎には何か関係があるか?
A 直接の関係はありませんが、進化の中で有顎脊椎動物が出現するときに起きたゲノム全体に渡る大きな遺伝子変化が、顎を生じさせたり、同時に獲得免疫も生じさせたのだと考えられます。

Q 魚類と哺乳類で免疫系が大きく異なる点は何か?
A これは簡単な問いですが、広く深い問題です。この授業全体で順を追って答えていきます。

Q Phase 3の眼とは?
A 柳田邦男氏による同名の著書(講談社、1984)より。
Phaseとは人間の意識レベルを示す。レベルは0〜4
                Phase 0= 昏睡・失神 状態(判断力 ゼロ)
                Phase 1= ぼんやり、たいくつ、酩酊、疲労困憊(判断の信頼性は低い)
                Phase 2= リラックス、定例作業時(予測や創造的活動能力は発揮されない)
                Phase 3= 精神活動が活発、意識が明解・機敏(適度な緊張)
Phase 4= 興奮、驚愕、慌てる、パニック(一点集中、判断力停止。信頼性は1と同様)
Phase 3の意識状態でものごとを見ましょう、という意味。
あ、Amazonで調べたら文庫版も含めて絶版みたいですね。興味がある人には貸しますよ。

Q 私(=中尾)がインフルエンザのワクチンを打たない理由とは?
A 免疫力が特に低下した病人や高齢者、乳幼児を除いて、普通の健常人はインフルエンザにかかっても、適切な安静と栄養状態を保てば多くの場合はいずれ治癒する。そうして得た本当の免疫こそ体を次回のインフルエンザ感染から守るのに最も強力である、と考えるからです。あなたに「打つな」と言っているのではないことに注意。
(参考)進化から見た病気(講談社ブルーバックス、栃内新 著、2009)

Q 今日に限ってかもしれないが、もう少し板書を充実させて欲しい。
A 基本的にはスクリーンへの映写で進めますが、大事な点は板書します。


2010年5月18日火曜日

魚類免疫学 2010.5.12 Q&A

補体は1回の講義で説明しきれないほど多くの内容を含むので、難しい授業でした。講義する側も、聞く側も?

  • C3aはなぜアレルギー増悪因子となるのか? C3aが引き起こすアレルギーとは何か?誰でも発症しうるのか?

C3a自体がアレルギーの原因物質(アレルゲン)ではないですが、肥満細胞という特殊な細胞に作用して、ヒスタミンなどの化学物質を放出させます。ヒスタミンがアレルギー症状を媒介します。ヒスタミンに関する説明はこちら。
http://ja.wikipedia.org/wiki/ヒスタミン

  • エイズウイルス(HIV)は白血球を攻撃する? 補体を不活化する?

HIVは、獲得免疫の司令塔として働くヘルパーTリンパ球に感染してその細胞を殺すために、感染した動物は最終的には獲得免疫不全になります。補体を攻撃することはありません。逆に、補体は、HIV粒子を破壊する活性があります。ただし、効率よく殺すにはHIVに対する抗体が必要です。

  • 補体はなぜ易熱性で、なぜ易熱性のまま進化してきたのか?

易熱性と言っても、天然では経験しない高温で失活するので、進化の中で易熱性であることが生存に不利には働かなかったのでしょう。ちなみに、補体系を構成する成分の中で特に熱に不安定なのは、C1、C2とB因子です。全ての成分が同じ程度に易熱性であるわけではありません。

  • 食物アレルギーは免疫の異常で起こるのか?

まだ完全には答えが得られてない、難しい問いだと思います。敢えて整理すれば、(1)反応しなくても良い異物に反応する状態、と(2)反応の仕方が異常な状態、の二つの現象がアレルギーの本体でしょう。

  • 補体を持たない動物にはどのようなものがあるか? 補体を持たない場合は、どのようにして異物認識や殺菌を行うのか?

たとえば、昆虫や線虫にはありません。昆虫の場合は、補体以外に様々なパターン認識分子(LPS結合タンパク質、βグルカン結合タンパク質など)が異物認識に働いています。抗菌活性は、各種の抗菌ペプチドが担います。

  • 補体の活性化にはどれくらいの時間がかかるのか?

血清中ではほんの数秒から数分でしょう。反応の終点をどこに定めるかにもよりますが。

  • 補体が大腸でも働いて、その細胞傷害作用によって大腸の細胞の成熟や成長を阻害することはないか?

正常な個体ではありませんが、異常に炎症を起こしてしまう病気では、自身の補体や白血球によって自身の細胞が障害を受けることが知られています。

  • C3aの生理作用はどこで発揮されるか。活性化が起こった部位?

感染局所だけでなく、そこから血流に乗って、あるいは血管から外にしみ出して働くことができます。

  • 哺乳類の補体と、より原始的な動物の補体では働きは同じか? 働きが同じだったら、魚の補体をヒトに入れても正常に働くか?

魚類と哺乳類では、基本的な働きは類似しています。ただし、補体系を構成する成分の一部をヒトと魚類間で入れ替えてもうまく機能しません。(互換性がない、あるいは、不適合であると言います。)

  • 膜侵襲複合体形成の仕組みがよくわからなかった。

C5の活性化型であるC5bを中心に、C6〜C8が集まって、さらに複数のC9分子が集合して膜侵襲複合体(MAC)ができます。MACは、細胞膜を貫通して細胞膜に穴をあけて細胞を障害します。

  • 補体は結局のところ重要?無くても良い?

補体を備えている動物にとっては、極めて重要な、実質的に不可欠な生体防御系です。そんな補体を持たない動物は、補体の機能を代替する、機能的には類似した別の生体防御因子を備えています。

  • kDaとは?

Da(dalton=ドルトン)は、タンパク質の分子量を表すのによく使われる単位ですが、正確には、1Da=炭素12原子の1/12の質量と定義されてます。kは×1000の「キロ」ね。10 kDaのタンパク質、といったらそのタンパク質の分子量(1モルの重さ)は10000に相当します。

  • 3つの補体活性化経路のうち、もっとも多く異物認識に寄与しているのはどれか?

一口には言えません。ケースバイケース。

  • 補体系は必要以上に複雑だと感じる。

そう感じます。でもそのおかげで、様々な生理活性を示すし、様々な方法で活性がコントロールされています。

  • 補体の活性化にCaイオンやMgイオンはどのように関与しているのか?

Caイオンは、C1という成分を構成するサブユニットタンパク質の四次構造の維持、MBLの四次構造維持に必須です。Mgは、C2とB因子という補体成分に配位して、それらの機能に必要とされています。

  • チオエステルを介してC3が水酸基を反応する場合に、周りに水酸基をもつ異物が無い場合は? 異物上の水酸基と他の水酸基をどのように識別しているのか?

周りに結合すべき異物の水酸基が無ければ、近くの水分子と反応します。水酸基ならば水を含めて何でもよいので、C3自身が単独で異物と自己細胞などを識別することはできません。

  • C1からC4はいつ頃発見されたのか?

C4の発見は1926年

  • ほとんどの動物がC3を持っているが、どの動物のC3も構造・機能的に同一か?

基本的なポリペプチド組成や、チオエステル結合などの機能部位は共通しています。アミノ酸配列同一性は低くても30%弱くらい。異物への結合、オプソニン作用など、基本的な機能は共通です。

  • C3とC3bの活性の違いはどのような構造上の違いからもたらされるのか?

C3aが切断除去されることによって、C3とC3bでは非常に大きな立体構造の違いがあります。詳しくはこちらの論文をどうぞ。
Structure of C3b reveals conformational changes that underlie complement activity. Janssen BJ, Christodoulidou A, McCarthy A, Lambris JD, Gros P.
Nature. 2006 Nov 9;444(7116):213-6.

  • C9欠損の頻度はなぜ高いのか?

欠損しても生存に不利に働かなかったので、自然淘汰されずに欠損個体の子孫が失われずに生き延びているのでしょう。

  • C3はどのように活性化されるか?

特殊なプロテアーゼ複合体(活性中心はC2やB因子の活性化型)によってC3aとC3bに分解されると活性化型になります。

  • C9の欠損をどのように調べることができるか?

まず、血清のヒツジ赤血球に対する抗体を介した溶血活性を調べます。活性がほとんど認められないと、まずはC9の欠損を疑います。次に、C9だけの活性を測定することができるので、まずは活性によってC9があるかどうかを調べます(神戸の常磐女子大でのみ分析を受託している)。C9タンパク質の濃度を測定することもできます(各地の大学病院などで検査可能)。近年では、C9のmRNA量も測定できるし、C9遺伝子中でC9を欠損状態にさせる点突然変異を特定することもできます(遺伝子変異特定は、九大病院でのみ可能)。

  • 補体はCaやMg以外の2価陽イオンでも働くことができるか?

おもしろい質問です。実はMgの代わりにMnも機能します。Coも弱いながら働けます。逆にHgは強く阻害します。Caの代わりになるイオンはほとんどありません。

  • C8やC7が欠損したらどうなるか?

C9欠損よりも機能不全が強く表れて、髄膜炎菌性髄膜炎のリスクファクターになることがわかっています。

  • どの活性化経路で補体が活性化されるのかは、抗原の種類で決まるのか?

基本的にはその通り。でもどれか一つの経路しか働かない、という場合はまれでしょう。

  • 補体成分C1の働きをもっと知りたい。

もう少し質問を詳しく聞きたいので、是非私を訪ねて下さいな。

  • 哺乳類補体活性化経路を示す図中で成分が異なる色で書かれていたのはどんな意味か?

よく気がつきましたね。同じ色で書かれた成分(たとえばC3/C4/C5, C2/Bf)は同じファミリーに属する(祖先を共有する親戚同士の)タンパク質です。

  • C3→C3(H2O)とあったのは何の意味か?

鋭い質問。C3は水溶液中では、そのチオエステルが僅かずつ、自発的に(自然に)水と反応して加水分解されていきます。加水分解された(H2Oが加わった)チオエステル部位をもつC3を、チオエステルが無傷で残っているC3と区別してC3(H2O)と呼びます。C3(H2O)の立体構造や機能はC3よりもその活性化型であるC3bに近いと言われています。

  • 異物を認識した補体をさらに異物と認識することはないのか?

異物を認識した補体は、成分を活性化型に変化させ、その活性化型(特にC3b)は、血中を流れていた未活性化状態の補体(特にC3)とは異なり、自分の免疫細胞が認識すべき分子となります。ただし、異物と見なされるわけではありません。

  • 鳩目ってスニーカーのヒモを通す穴についているヤツ?

そう!!! まさしく! いい喩えだなぁ。ありがとう。

私が言いたかったのはこんなヤツ。↓








2010年5月13日木曜日

比較免疫学特論 2010/4/22 Q&A

遅くなってすいませんでした。


  • レクチンの特異性において認識の違いが生じる意味は?

ちょっと質問の意味をとりにくかったのですが… 様々な構造の糖鎖を認識できる様々なレクチンは、結果としてそれだけ多様な微生物を認識することができて、自然免疫による生体防御に役立つ、と解釈されます。


  • MBL/ficolinに結合するプロテアーゼはセリンプロテアーゼだけか? またその結合したセリンプロテアーゼの意味は補体の活性化だけか?

これらのレクチンに会合できるのは、MASPファミリーに属するセリンプロテアーゼだけです。ヒトでは、MASP1, MASP2, MASP3そしてsMAPです。

  • MBL/ficolinのコラーゲン領域に、MASPやsMAPはどのように結合しているのか?

MASPのN末端側のドメインと、MBLなどのコラーゲン領域が、静電的に相互作用していることが解明されています。


X線結晶解析で得られた立体構造や、mutantの機能解析から、こまかい結合部位もほぼわかっています。詳しくはこちらの論文をどうぞ。
Teillet F, Gaboriaud C, Lacroix M, Martin L, Arlaud GJ, Thielens NM.
Crystal structure of the CUB1-EGF-CUB2 domain of human MASP-1/3 and identification of its interaction sites with mannan-binding lectin and ficolins.
J Biol Chem. 2008 Sep 12;283(37):25715-24

  • 魚の血清からタンパク質を精製するのにどれくらいの期間がかかるのか?

それはタンパク質によって様々です。何段階もいろんなクロマトグラフィーをしないと純粋にならない場合は、当然のことながら長い期間がかかります。方法がわかっていても、数週間とか… 精製法自体を確立するような、研究の初期段階からの期間を合算すれば、1年以上に及ぶ場合もあるでしょう。タンパク質の精製自体が、場合によっては非常に高度なサイエンスを含みます。プラスミドやゲノムDNAの精製とはかなり状況が異なります。

  • 魚類にのみ存在するレクチンがあるか?

今のところ見つかっていないと思います。

  • Lily-typeレクチンの糖鎖結合部位はN-型かO-型か?

レクチンのリガンドとしての糖鎖の結合と、糖タンパク質糖鎖の付加の型を混同していますね。

  • Fakelin (=Microfiblilar-associated protein 4 homologue)の生理的意義はどのように解釈されているのか?

まだほとんど何もわかっていません。が、ヒトの肺で発現し、肺胞で異物認識を担う別のレクチン(SP-A)と相互作用しているという報告があります。SP-Aを肺組織中に固定しているのかもしれません。ちなみにコイのFakelinは、ある種の微生物に結合します。直接Fakelinが異物認識を担って生体防御に関与している可能性があります!

Schlosser A, Thomsen T, Shipley JM, Hein PW, Brasch F, Tornøe I, Nielsen O, Skjødt K, Palaniyar N, Steinhilber W, McCormack FX, Holmskov U.
Microfibril-associated protein 4 binds to surfactant protein A (SP-A) and colocalizes with SP-A in the extracellular matrix of the lung.
Scand J Immunol. 2006 Aug;64(2):104-16.

  • コイにはIgM意外の抗体クラスが存在するのか? あるとすればクラスの違いによってどんな機能的違いがあるのか?

IgDとIgTというクラスもあります。詳しくは、別の回の授業で紹介します。すごくおもしろい発見があります。予習したければ、こちら。
Flajnik MF. 
The last flag unfurled? A new immunoglobulin isotype in fish expressed in early development.
Nat Immunol. 2005 Mar;6(3):229-30.


  • フグ体表粘液中のlily-typeレクチンとユリ目植物に存在するレクチン間の遺伝的な関係性は? また両者が反応するバクテリアには共通性があるか?

全然わかりませんが、進化のある段階で、バクテリアかウイルスによって水平に遺伝子が伝播したのかも知れません。反応できるバクテリアの共通性については研究例がまだありません。

  • Cタイプレクチンドメイン中のEPNモチーフとQPDモチーフは構造的に似ているのか?

似ています。が、荷電の位置がPを挟んでお互いに逆になるので、かなり違うとも言えます。C-typeレクチンの立体構造を探してみたら?

  • レクチンの存在量と免疫力の強さに相関があるか?(たとえば魚類にはFCNがないから免疫力が弱い?)

個体レベルでの生体防御能の強弱と関連づけるにはまだデータが足りません。が、当然答えたい、重要な問いですね。

  • なぜMBLは酵母を認識できないか?

酵母を認識できます。酵母表面のマンナンに結合します。

  • コレクチンのCollagen-like domainは、かなりフレキシブルに動けるのか?

動けます。が、束ねられたレクチンドメインの糖鎖認識部位が全く逆の方向をてんでばらばらに向いてしまうほどには、緩くないようです。

  • 両生類の体表粘液にもレクチンがある?

あります。試しにPubMedで”Xenopus lectin skin”をキーワードにして検索してみたら?
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  • MBL, FCN, MASPなどは体液や血液に恒常的に発現しているか? 微生物感染で発現量が上昇するか?

恒常的(構成的)に発現していますが、さらに微生物感染によって発現量が上昇します。